『毎日新聞』2008年6月12日付

大学CIOフォーラム:なくせ「縦割り」の弊害 模索する国立大


大学のIT戦略を統括するCIO(最高情報責任者)が意見交換する第5回「大学CIOフォーラム」が11日、東京都内で開かれた。東大、京都大など全国11大学のCIOが実情を報告。「縦割り」の弊害をどのように改善するか模索する国立大の姿が浮き彫りになった。

国立大が「障壁」として挙げたのは、各部局ごとに人事情報や管理システム、予算権が分散していること▽予算が年度別で長期的な計画が組めないことなど。大阪大の竹村治雄・サイバーメディアセンター長は「今はシステムごとに予算を要求する『自転車操業』状態。ばらばらに更新していると、全体の最適化はできないので、中期的な計画を立てているが、現場の教員との意思疎通が難しい」と話した。会場の大学関係者からも「ネックは予算権。獲得のポイントを教えてほしい」との声があがった。

それに対し、筑波大の腰塚武志副学長は「ようやく予算権をCIOに集約し、大学全体の機器利用を分析して、整備計画をまとめた。全体を見渡せたところで、2台あったスーパーコンピューターを減らすなど、誰でも納得するところから削減している」と説明。東北大も今年4月、学内のIT戦略を担当する情報シナジー機構を改編。各研究室ごとに負担金を算定し、学部から徴収する方法で予算を確保した。

東大の岡村定矩副学長は「ITサポートは教育、研究、事務という目的ごとに考えることを共通認識にした方がいい」と指摘。部局ごとに持っていた研究員などの人事データを、大学全体を網羅したものに切り替え、適正な人員配置を模索。部局ごとの『ローカルルール』を排除するのにも役立つという。

一方、私大の同志社大は学校の事務効率化よりも「学生へのサービス提供」をIT化の目的にする。真胴正宏・総合情報センター長は「学生を集めることが優先。優れた研究者がいても保護者は評価しない」と明言。同大では独自システムで、履修登録・取り消し、成績通知、授業アンケートなどを実施。中でも、成績評価に海外の大学で採用されているGPA(Grade Point Average)制度を導入。平均点が重視されることから、自宅から登録したものの受講してない教科の履修を取り消せば、平均点が下がらないため、利便性は高いとみている。

CIOフォーラムは05年11月にスタート。IT基盤整備について大学共通の課題を議論するために、マイクロソフト、三菱総合研究所を中心に、IT関連企業らが支援して開催している。【岡礼子】