『読売新聞』2008年6月10日付

大学ランク「過信ご注意」
専門家が警鐘 OECD、各国影響調査


経済協力開発機構(OECD)などが、大学ランキングについて、各国の高等教育への影響を調べている。

この調査で来日した高等教育の専門家、アイルランド・ダブリン工科大のエレン・ハゼルコーン副学長は「ランキングの過信は禁物」と警鐘を鳴らした。

最近は、英国の大衆紙がアイルランドを含むランクを発表、ポーランドやチェコでも始まるなど、ヨーロッパ諸国にも大学ランキングが広がっているという。この結果、「順位が上がると学生や資金が集まるので、どの大学も順位を気にするようになった。産業界でも、英国では、ある順位以上の大学の学生しか採用しない企業が現れた」。

また、経済同様、高等教育のグローバル化が進む中、「留学生獲得のため、大学は世界での順位を上げようとする。チェコの大学は、ドイツ語だけではなく、英語での授業プログラムも導入するようになった」。

しかし、ランキングには問題も多いという。「データの集め方が不正確だったり、総合順位で比較する傾向が強いため、一つ一つの大学の良さが評価されなかったりする。その点、日本のメディアによるランキングは、多様な基準を用いて多面的に評価しようとするところがよい」

順位の結果に、大学も政府も一喜一憂すべきでないという。「大学が自校の改善のために評価結果を用いるのはよいが、順位アップを目標にすべきではない。政府は、国民がランキングを過信しないように、大学に関する多様な情報を発信する責任がある」

国際調査は、ドイツやオーストラリアでも実施され、ハゼルコーン氏らの手で分析が進められる。(石塚公康)

大学ランキング 1980年代後半に米国の雑誌「USニューズ」が始めたのが、本格的なものでは最初。日本でも90年代から、雑誌の特集や書籍の出版がされるようになった。21世紀に入ると、タイムズ・ハイアー社(英国)や上海交通大学(中国)、「ニューズウィーク」誌(米国)が世界ランキングを発表。昨年のタイムズでは、日本では東大の17位が最高だった。