時事通信配信記事 2008年5月31日付

教育予算めぐり対立=文科省と財務省


今後5−10年間の教育政策の目標を定める「教育振興基本計画」の閣議決定を前に、文部科学省と財務省の折衝がこう着状態に陥っている。文科省が道路特定財源の一般財源化などを当て込んで教育予算拡充に向けた数値目標を入れたいのに対し、財務省は「アリの一穴となり、歳出改革が崩壊する」として認めない方針を貫いているからだ。このため政府関係者からは、「もはや政治決着しかない」との声も上がっている。

文科省は「国の政策の優先度を教育に置くというメッセージを込めたい」(幹部)として、現在、対国内総生産(GDP)比3.5%の公的教育投資額を今後10年で5%以上に引き上げる案を財務省に示した。「5%」なら年間7.4兆円もの予算増となり、文科省は既に公立小中学校の耐震化、幼児教育の無償化、大学授業料の軽減といった使途のイメージも描いている。

数値目標は4月の中央教育審議会(文科相の諮問機関)が出した答申にはなかったが、自民党文教族から「教育予算を取るための計画ではなかったのか」との後押しがあり、文科省も強気の姿勢に転換。さらに「教職員数の純減」を掲げた行政改革推進法(2006−10年度)の期限切れを見越し、「今後5年で教職員定数2万5000人増員」との目標も付け足した。

これに対し財務省は、「歳出改革で社会保障や公共事業を削ってきたことが水の泡になる」(幹部)と反発。文科省は世界トップの学力を目指すため、教育予算でも経済協力開発機構(OECD)加盟国平均(GDP比5%)を上回る必要があるとするが、財務省は「少子化」を考慮していないとして、生徒1人当たりの公的支出で見れば主要先進国と遜色(そんしょく)ないとのデータを提示。諸外国の教育予算の多寡(たか)と生徒の学力との相関関係はないことも示した。

同計画は当初、5月中に閣議決定する予定だった。しかし、両省は互いの主張を展開する「消耗戦」を続けており、着地点を一向に見いだせない状況だ。