『岡山日日新聞』2008年5月28日付

包括連携の成果続々 岡山大 今月で20件


岡山大(千葉喬三学長)の包括連携戦略が、順調に進んでいる。04年にスタートした連携は民間企業、地公体、経済団体などへ幅を広げ、14日に締結した津山工業高等専門学校で20件に達した。既に成果も出ており、地域連携の輪は、ますます広がっていきそうだ。  同大は、包括連携契約締結で、互いの活動目標に拘束力を持たせ、より強固に連携事業を推進。同大が掲げる「社会貢献」「教育」「研究」の3要素を団体ごとにアレンジし、連携に盛り込んでいる。  初めての相手は、県産業振興財団(岡山市)内にある技術移転機関の岡山TLO(同)。同大は04年の法人化以降特許取得が可能になったが、売り込みや値付けは専門外のため、仲人役として岡山TLOと連携し、技術移転を推進してきた。  これまでの技術移転は、地場企業を中心に48件。06年度の特許料収入は、約1千万円と全大学中17位で、早稲田大より上位という。今年度も年間10数件程度の契約締結を目指す。  「官」との連携も進む。国土交通省中国地方整備局(広島市)とは、年1回意見交換会を行い、道路や港湾整備などの問題や課題を洗い出し、新技術開発を進める。  07年度は4件を受託し、橋脚などに塗料で書かれた落書きの消去剤開発、排水性塗装道路での凍結防止剤の効果持続方法などを研究中。08年度は5件受託する見通し。  日本原子力研究開発機構とは、人形峠環境技術センター(苫田郡鏡野町)での原子力関係事業で連携。今年度中に同センター内に岡山大サテライト研究室を設け教員、学生のデータ整理、打ち合わせを行えるようにし、共同研究も推進する。  岡山市とは、文化事業関連で包括連携を結ぶ。同大附属図書館にある池田家文庫を同市駅元町の市デジタルミュージアムで、毎年秋に一般公開。同文庫をコンテンツとした駅前のにぎわい創出を図っている。昨年は会期中(2週間)3千人が来場。4回目を迎える今年度は、11月上旬の開催を予定している。  また、同市とは、保健医療分野でも連携しており、協定締結から2年9カ月後、初の連携協議が行われた。  金融機関の動きも活発。05年3月の中国銀行(岡山市)を皮切りに中小公庫岡山支店(同)、おかやま信用金庫(同)、トマト銀行(同)と締結。金融機関のリレーションシップバンキング(地域密着型金融)推進の一環で、金融機関側から連携のラブコールを受けた。  地元企業の経営相談に対し、連携して解決を図る取り組みがメーン。専属のマネジャーが、受けた相談の中から、対応できる技術研究に関するものを同大の研究推進産学官連携機構に報告。同機構が学内の専門教授を探し出し、企業とマッチングさせ、課題解決に当たっている。  共同研究、機能評価に至った事例は現在4件。成果を生かし、製品化されたものもある。  企業関連でも成果が出始めている。玉野市に造船所を構える三井造船(東京都)とは、船舶関連のエンジンなど3件の共同研究を実施。既に一部成果が学会発表、製品の改良点に反映されており、研究項目を増やす予定。  DOWAホールディングス(東京都)とは、環境材料分野で包括連携。06年度は環境アセスメントシステム構築に関する共同研究を実施。07年度からはナノ材料の研究開発に取り組む。現在は調査分野の絞り込みを終え、本格的調査に着手する段階に入っている。  14日、津山高専との協定後の会見で千葉学長は「独立した法人になったので、随時、企業、公的機関と(協定を)結んでいきたいと思う。幾つかの枠組みを用意しておけば、何が起こってもうまく対応できると考えているので、これからも増えていくと思う」と述べている。