『岩手日報』2008年5月16日付

奥州市が産学研究補助 製品、技術に上限50万円


奥州市は、地元中小企業などと研究機関が行う新製品、技術開発を支援する「市産学共同研究推進事業補助金」を創設した。大学などと地場の連携を促し足腰の強い産業を育て、知識集積を進める。同様の補助金は花巻、北上市などが導入済み。奥州市は鋳造分野で岩手大の研究施設を誘致し、技術者養成と知識の地元還元を進めてきた実績があり、一層の連携に期待がかかる。

補助金は大学や高等専門学校、研究所などの機関と、市内の中小企業や起業家とが行う共同研究を支援する。

対象は製品や技術開発全般で工業、農業、食品などの分野は問わず研究費の半額以内、50万円を上限に交付する。2008年度当初の事業費は100万円。

補助金交付要綱は4月から施行したが、実質的な申請受け付けは今月から始めた。

申請を受け付ける市鋳物技術交流センターによると、中小企業と大学などとの一般的な共同研究費用は50万―100万円。しかし価格競争や原材料高に苦しむ中小企業にとって研究費の工面は頭の痛い問題で、補助金創設は企業のニーズに応えたものだという。

同市は既に岩手大との連携拠点として、水沢区に大学院工学研究科の鋳造技術研究センターを誘致。今春、金型・鋳造工学専攻初の卒業生を輩出するなど人材、知識の交流と還元が進む。

ただ、近年は廉価な海外製品との競争が激化、各企業は価格対応に加え品質と技術で差別化を図るため、研究開発力を高める必要性が指摘されている。

同センターの及川康文主任は「市が掲げる副県都構築を進める上でも知識集積と産業力の裏付けは不可欠。これまで築いた産学連携のすそ野を一層広げていきたい」と話す。