『産経新聞』主張 2008年5月12日付

教育基本計画 メリハリつけた振興策を


今後5年間で取り組む教育の重点施策を示す国の「教育振興基本計画」の策定が遅れている。

教育予算拡充で財務省などとの調整がつかないためだ。教育投資にはメリハリをつけ公教育の再生を進めたい。

基本計画は、改正教育基本法で策定が義務づけられた。教育目標を数値などで分かりやすく示し、目標実現への施策を明示することで、計画的な教育振興が期待されていた。

しかし中央教育審議会が4月に答申した計画案は、目標と施策が明確に示されたとは、とても言い難い。

答申では表題に「『教育立国』の実現に向けて」と掲げ、「欧米主要国と比べて遜色(そんしょく)のない教育水準を確保する」とした。

施策では、道徳教育充実のため副教材への国庫補助制度のほか、「校舎耐震化1万棟」「留学生30万人計画」など一部に数値目標を挙げてはいる。

だが学力向上や生徒指導など肝心の公教育再生や、世界に通用する大学の教育・研究環境改善に向け、明確な目標や施策が示されてはいない。

審議の中では「いじめや校内暴力を半減させる」「高卒段階で英語で日常会話ができる」といった目標がいったんは提言されたが、答申には盛り込まれなかった。

渡海紀三朗文部科学相は9日の文科相経験者との会合で、現在は国内総生産(GDP)比3・5%の年間教育投資額を、経済協力開発機構加盟国の平均の「GDP比5%」とする数値目標を盛り込む考えを示した。

しかし、財務省などは難色を示している。

教育予算の大部分を占めるのは教職員の人件費だ。文科省や教育関係者からは少人数学級や習熟度別授業などを進めるため教員定数増を求める声が強い。

だが少子化の中でどのくらいの教員増が必要なのか、計画案では不明確だ。

教員の不祥事が絶えず、指導力不足の教員がきちんと把握されていない。ダメ教師をいくら増やしても教育再生は実現できない、という不信感があるのも事実だ。

理数教育で魅力ある授業を進める高校を支援する「スーパーサイエンスハイスクール」など効果をあげている事業がある。熱心な教員や学校を厚く支援する施策推進を計画で明確に示すべきだ。