『岩手日報』2008年5月11日付

岩手大で産業研究講座 地元就職へ産学官連携


岩手大と県立大のキャリア講座「地場産業・企業論・企業研究」は10日、盛岡市上田3丁目の岩手大で始まった。初回講師は達増知事が務め岩手で働く意義を力説。学生は今後、経営者の哲学などを聞き、仕事の現場を訪問、地元定着への課題を企業とともに探る。産学官一体で取り組む講座で岩手に根差す人材育成を進め、流出に歯止めをかける。

初回は一般市民にも公開。岩手大と県立大の受講生約50人のほか、市民ら約100人が参加した。

達増知事は新渡戸稲造の就職論などをひもとき「文化的魅力と道義的信頼というソフトパワーが岩手にはある」と、本県で働く意義を説いた。外務省で働き始めたころについて「勘所をつかんだのは3年目。社会は手取り足取り教えてはくれない。3年目で辞める人が多いが、我慢することも大切」と述べた。

学生の「よりよい決断のために心掛けていることは何か」との質問に「人は全知全能ではないが『良知良能』なら可能。手持ちのトランプカードから最善を尽くすことが大切」とアドバイスした。

同講座は、岩手大、県立大が岩手経済同友会や県などと連携した取り組み。両大ともに県内就職率の向上が課題となっており、講座を通じ本県で働き、地域貢献する意義を見いだす。

7月19日まで原則土曜日、岩手大などで開かれ、講師は地場企業経営者らが務める。

岩手大の玉真之介副学長は「産学官一体となった人材定着への本格的な取り組みが始まった。実際に働く人の声も聞く講座も考えていきたい」と話す。