『読売新聞』社説 2008年4月30日付

教育基本計画 目標を数値で示すべきだ


教育投資や学力向上などの目標を数値で示し、国民にわかりやすい内容にするべきだ。

中央教育審議会が、国の中長期的な教育施策を定める初の教育振興基本計画について答申をまとめた。

基本計画は改正教育基本法に基づくもので、今後10年間に目指す教育像と直近5年間に取り組む施策を盛り込む。だが、答申では、教育にどれだけの予算を投入し、教育の質向上につなげるかなど、具体的な展望が見えてこない。

国の計画を参考に地方自治体も計画を作るだけに、計画を閣議決定する前に、より踏み込んだ内容にしてもらいたい。

計画で最大の注目点は、諸外国に比べて低いと指摘される教育への投資である。

しかし、答申は副題に「教育立国の実現」を掲げながら、「必要な予算について財源を確保し、欧米主要国と遜色(そんしょく)ない教育水準を確保すべく教育投資の充実を図る」と抽象的な表現にとどまった。

新学習指導要領では、授業時間や学習内容が増加する。小学校では2011年度、中学校は12年度から全面実施だが、理数については移行措置として来年度から時間、内容ともに大幅に増える。

教職員の増員が不可欠だ。しかし、この点も、「定数の改善をはじめ条件整備を着実に実施する」としか記されていない。

中教審の議論でも、「これを読んで何か変わるとは、思えない。財政当局寄りの表現だ」と批判が出た。自民党の文部科学部会などは、計画に投資や増員の数値目標を入れるよう決議した。

さらに問題なのは、5年間で学力を現在よりどれぐらい引き上げるかが、不明確なことだ。

答申では、「これまで教育施策では目標を明確に設定し、成果を検証して、新たな取り組みに反映させる実践が十分ではなかった」と改善を求めている。だが、目標値がほとんどない。

海外や自治体独自の教育基本計画には、学力などの目標値が明記されているものも多い。

英国は、08年までの5年間に全国テストの英数で11歳児の85%が標準レベルに達することなどを掲げている。フランスやフィンランドなども目標値を示している。

沖縄県では、全国学力テストで国語と算数・数学の正答率の平均値を小6、中3ともに11年度には70%にする、としている。

具体的な指標があればこそ、それを達成するための努力や工夫があるのではないか。