『毎日新聞』鳥取版2008年4月26日付

県:医師確保へ、鳥大医学部入学者に奨学金特別枠 来年度導入へ検討


◇指定病院で9年間勤務条件

県は鳥取大医学部の来年度入学者に対し、卒業後9年間、県の指定医療機関で勤務することを条件に奨学金を貸与する特別枠(5人)の創設を検討している。中山間地域の医師確保を狙った苦肉の策。医師の「囲い込み」は加熱する一方だ。【宇多川はるか】

県内の地域医療を支える自治体病院は近年、特に中山間地域で医師不足が深刻化している。智頭病院は常勤の医師が05年度は12人いたが、今年度は9人に減少。西伯病院(南部町)は05年度に14人いたが、定年退職などで3人辞め、11人になった。医師不足で存続が危ぶまれた大山診療所は、島根県出雲市の医師が勤務することになったが、医師の負担軽減のため入院の受け入れをやめる。

県は06年度、医師確保のため鳥取大医学部の地域枠入学者を対象に、県内の病院に一定期間勤務した場合は返還を免除する奨学金を創設した。07年度には県外大学に通う県内出身の医学部生に対しても同様の奨学金を設けた。07年度は33人がこうした奨学金の給付を受けた。

県内での勤務を希望する医師を県職員として採用し、希望する自治体病院に派遣する「ドクターバンク」も06年度に創設したが、2年間の派遣実績はたった1人。県医療政策課は「PRが足りないのだろうか……」と頭を抱えている。

今回の特別枠は、これまでの制度より縛りをきつくした。勤務地は今まで本人の希望を最優先にしていたが、今回は、県職員になって県指定の病院で9年間勤務することを条件にする予定。同課は「鳥取の地域医療を支える人材を確保したい」としている。問い合わせは県医療政策課(0857・26・7195)へ。