『山陽新聞』社説 2008年4月22日付

教育基本計画 財政裏付け欠き無責任だ


中央教育審議会は初の教育振興基本計画を渡海紀三朗文部科学相に答申したが、実現性を担保する肝心な数値が盛り込まれず物足りない内容となった。

基本計画は二〇〇六年の改正教育基本法で、新たに政府に策定が義務付けられた。十年先を見通し、今後五年間で進める教育の目標を定めるものだ。

答申は日本が発展していく原動力は「人づくりをおいて他にない」とし、あらためて「教育立国」を宣言して教育振興に取り組むよう求め、七十五の施策を示した。このうち重点的に取り組むべき事項には「確かな学力の保証」など九つの目標と二十二施策を挙げている。

しかし、施策の裏付けとなる教育予算の拡充については「欧米主要国と比べて遜色(そんしょく)のない教育水準を確保すべく充実を図っていくことが必要だ」との表現にとどまり、具体的な数値は示されていない。「確かな学力の保証」や、同じく重点に据える「教員が子ども一人一人に向き合う環境づくり」にしても、教職員定数の改善や施設の充実などを指摘しながら、教育投資額や増員目標数は盛り込まれず迫力に乏しい。

財務省と文科省の調整が付かなかったためとされるが、省庁間の協議通りに答申したのでは審議会の意味はなかろう。授業時間や学習内容が増加する中で教育効果を高めるには、教師が子どもたちと向き合い十分に指導できる環境整備が必要だ。

裏付けもなく多様な取り組みを求められたのでは、現場は混乱するばかりで逆効果ともなりかねない。中教審は目指す教育と必要な投資をきちんと示し、実現への強いメッセージを発すべきだった。教育という将来への重要な投資をおろそかにしては、「教育立国」実現は到底おぼつかない。