『京都新聞』2008年4月18日付

iPS細胞実用化へ産学連携推進を
京大が関西企業に呼び掛け


京都大は17日、iPS細胞(人工多能性幹細胞)の実用化に向けて産学連携を推進しようと、「iPS細胞研究産業応用懇話会」を京都市左京区の芝蘭会館で開き、新薬の開発や疾患の原因解明の分野への産業界の参入を呼び掛けた。

初めての懇話会に、関西を中心に企業の担当者ら約200人が会場を埋めた。山中伸弥iPS細胞研究センター長は「日本では、iPS細胞を再生医療に応用する研究が多い半面、米国で積極的に進められている疾患の原因解明や薬効、副作用の評価などの研究はまだ少なく、産業界のみなさんに期待したい」と訴えた。

企業を代表して、島津製作所(京都市)の担当者が「例えばiPS細胞の安全性の評価にどんな分析機器が必要なのか教えてほしい。日本の医療機器産業の発展に力を貸してほしい」と述べた。

また、武田薬品工業(大阪市)の研究員は「薬効などを試すためには、基準となるiPS細胞を作ることが必要」と指摘。企業が患者由来のiPS細胞を用いることについて、学内の倫理委員会に研究計画を申請している中畑龍俊副センター長は「患者には企業が使うことに事前に同意してもらい、産業化に支障がないようにしたい」と答えた。

iPS細胞より先行しているES細胞(胚性幹細胞)での特許が産業化に影響を及ぼすのではないかとの質問に、大学側は「(慶応大など)国内のiPS細胞の研究拠点が連携し、特許情報を共有するなどの対策が必要だ」との見解を示した。