時事通信配信記事 2008年4月15日付

国立大法人化で天下りが「隠れみの」に


全国で年間20人前後が建設・設備業界に天下っていた国立大学だが、2006年以降は職員の再就職の実態を把握することが難しくなった。国立大を経て退職する文部科学省職員も多いが、「大学法人化」以後は、国立大が国の再就職公表制度の対象から外れたためだ。専門家は「国立大が文科省職員天下りの隠れみのになっているのでは」と指摘している。

国家公務員が在職中の職務と関係がある企業に就職するには、退職後2年間は人事院の承認が必要。同院は毎年、各省庁の職員の再就職先を取りまとめて公表している。

文科省に所属していた国立大も公表対象だったが、04年度からは行財政改革の一環で同省から切り離されて「国立大学法人」となった。職員の身分は公務員ではなくなり、06年からは再就職の人事院承認も要らない。

主な国立大8校に職員の再就職について問い合わせたところ、「把握していない」(東北大)、「民間に準じた扱いなので公表していない」(信州大)といい、大学側が自主的に公表している例はなかった。

一方、文科省との人事交流は従来と同様に続いている。90ある国立大(自然科学研究機構など大学共同利用機関も含む)の施設担当部の部長のうち、31人は同省文教施設企画部で勤務した経験がある。同省職員が国立大に出向したまま、退職してしまうケースも多いという。

五十嵐敬喜法政大教授(公共事業論)は「国立大学法人が文科省の隠れみのになっているのではないか」と指摘。「日本道路公団や郵政の民営化と同じで、職員の顔触れは変わらないのに情報公開が後退している」と批判している。