『読売新聞』2008年4月15日付

本紙寄付講座 伊熊編集委員が東大で講義


東京大学教養学部に設置された読売新聞の寄付講座「国際ジャーナリズム(読売新聞)」が9日、開講した。

国際ジャーナリズムの現場の声を聞くことで、学生のマスコミへの関心を高めるとともに、国際政治の理解を深めるのが狙い。読売新聞の東大への寄付講座は初めて。

担当するのは、読売新聞編集委員の伊熊幹雄客員教授、イスラム地域の専門家として知られる山内昌之教授と准教授1人、助教2人。9、10日はオリエンテーションが行われ、計500人近い学生が参加、学生の関心の高さをうかがわせた。

講座の説明の中で伊熊教授は「国際ジャーナリストの仕事はどういう仕事か、どんな訓練や準備が必要か話していきたい」と意気込みを語った。山内教授は「国際政治を前線で見てきた人の話は学者の国際分析と違った視点で学生の刺激になるはず」と講座の利点を強調した。

聴講者の1人、箕浦春菜さん(22)は「流れる情報をうのみにするのでなく、どう生かすかの視点を勉強したい」と期待していた。

講座は1、2年を対象とした総合科目の講義と、3、4年対象のゼミからなり、ソ連崩壊以降のロシアの歩みや、2001年の米同時テロ事件後のブッシュ米政権の外交、安全保障政策などを柱に、現代国際政治について学ぶ。

教材には、国際ニュース通信社や有力紙誌などの報道や論評・解説、ドキュメンタリーを多用し、現役外交官などとの討論の場も設ける予定だ。09年度には、夏休みの1か月間、読売新聞の海外支局での就業体験の実施も検討している。伊熊教授は「大学生の活字離れが言われて久しいが、インターネットの切り張り情報でなく、情報の宝庫である新聞の魅力も伝えたい」としている。

開講を記念し、6月14日には、谷内正太郎・前外務次官や小倉和夫・国際交流基金理事長らをパネリストに、シンポジウム「2008年の選択――世界はどこへ行くのか――」を東大駒場キャンパスで開く。(石田浩之)