『十勝毎日新聞』2008年4月15日付

産学のサロン新設
専門家配置で連携強化


帯広市で策定している「帯広版リサーチ・アンド・ビジネスパーク(R&B)」構想案が固まった。産学の関係者が日常的に接触できる「サロン」を新設、産学連携の専門知識を持つコーディネーターも配置する。長期的には、帯広畜産大学を含めた試験研究機関や企業の集積地形成も探る。市は5月に細部を詰め、議会や帯広商工会議所に説明する。地場資源を生かした新産業化の試みを活発化させる上では、行政の強力な推進体制構築が問われそうだ。


構想策定は砂川敏文市長の3期目重点公約。主に「産」が「学」にシーズ(種)のヒントを提供した従来の連携にとどまらず、「学」が盛んにシーズを送り出して事業化を提案する流れも想定。昨年10月、市をはじめ関係者約20人で検討会を発足した。

構想の目玉は、産学を円滑に引き合わせる仕組みづくり。大学、試験研究機関とパイプを持たない企業には「どのような手順で相談してよいか分からない」との悩みもある。シーズ開発側にとっても、地域貢献につながる産業化の手掛かりを得る上で効果的な情報伝達は欠かせない。専門家も交えた「サロン」を設けることで、課題に対応する。

新産業創出は「農業」「食品」「バイオ」「環境」などの分野で帯広・十勝の強みを生かす。文科省の「都市エリア産学官連携促進事業」指定を受け、十勝圏振興機構などが研究を手掛ける農産物関連のシーズや産業クラスターの実績を基盤とする。

市は今年度、帯畜大などの研究成果を新産業に生かすための研究成果発表会、産学連携をさらに浸透させる講演会を開く。ただ、経済界などには、公約化以降の構想策定に2年間を費やした砂川市長の「本気度」を問う声もくすぶる。構想の実行段階では、行政による取り組みのスピードアップも求められる。市は「サロン形成やコーディネーター選定など構想推進も率先して携わる。企業誘致や人口増にも結び付けたい」(政策推進部)としている。
(岩城由彦)