『毎日新聞』石川版2008年4月4日付

’08北陸アカデミー:北陸先端科学技術大学院大・片山卓也新学長
◇地域の大学院が連携を


開学から19年目を迎える北陸先端科学技術大学院大(石川県能美市)は、情報や材料などの分野で多くの研究者を輩出する一方、近年の国立大学法人化で厳しい大学間競争にもさらされる。1日にトップに就任した片山卓也・新学長に、白山ろくに位置する大学から北陸の「学」をどう見据え、導こうとしているのかを聞いた。【野上哲】

北陸先端科学技術大学院大は、大学院専門に教育を行う先駆的な国立大学院大として90年に開学。知識科学▽情報科学▽マテリアルサイエンスの3研究科などに3月現在、教員168人を擁し、学生913人(修士639人、博士274人)が学ぶ。

片山学長が掲げるのは「トップレベルの国際的大学院の構築」だ。

教員のレベルは高く、1人当たりの共同・受託研究費は国立大1位、論文数は6位。携帯電話の通信技術、人工臓器など医療材料、植物原料プラスチックなど世界的にオリジナルな研究もある。片山学長は「東大や京大にもないようなトップレベルの研究がある。優秀な研究者をまとめ、海外からも評価されやすいような『コア』(中核)を作りたい」と話す。

一方、質の高い学生を集め、育てることも重要。技術者や研究者など、学生の進路を見据えた「新教育プラン」を今年度から導入した。学部3年から飛び級で入学させ、通常5年の修士・博士課程を4年で終える一貫課程などを整備した。

また、中国やベトナムなどアジア地域からの留学生受け入れも人材確保の柱に置く。現在、学生全体の2割を占める留学生について、奨学金の拡充で「3割には上げたい」。1割にとどまる外国出身教員を増やすことも「国際化」の条件とする。

04年の国立大法人化で、各大学は研究費獲得などで厳しい競争下に置かれている。地方の小規模な教育研究機関にとっては、地域連携がカギだ。

「安穏とはしていられない」。片山学長は強調する。「1大学では、東大など巨大な大学には負けてしまう。地域の大学院がまとまって大きな予算を取ってくるなど連携が必要だ」。金沢大や富山大、福井大などとの共同研究や人材交流などを構想しており「北陸の地で仕事をする者として、旗振り役も務めたい」と意欲的だった。

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■人物略歴

◇かたやま・たくや
日本IBMを経て67年に東工大工学部助手、85年に教授。91年、北陸先端科学技術大学院大教授に就任。安心電子社会研究センター長を経て現職。専門はソフトウエア工学。68歳。