『読売新聞』2008年3月25日付

大学のカリキュラム、学部ごとに到達目標を国策定へ


「大学全入時代」を控えて大学間の教育内容に格差が広がっていることから、文部科学省は、人文系、社会科学系、自然科学系といった学部ごとのカリキュラムに、学生が卒業までに習得すべき「到達目標」を導入することを決めた。

来月にも日本学術会議に審議を依頼し、早ければ2011年度からの運用を目指す。学士課程の教育内容は各大学の自主性に委ねられており、国として基準を策定するのは初めて。到達目標を取り入れた大学には補助金を上乗せするなどして実施を促したい考えだ。

大学のカリキュラムは1991年に大学設置基準が緩和されて以来、各大学の裁量で多様な科目を設置できるようになった反面、学生が場当たり的に科目を選んだりするなど「学問を体系的に学べない」との批判が高まっている。

「中央教育審議会」の大学分科会も、25日午後に公表する学士課程教育に関する中間報告で「目先の学生確保が優先され、大学が保証する能力の水準があいまいになっている」と指摘。国に対し、国際的に通用する教育水準確保の枠組みづくりを求め、日本学術会議との連携を提案する。

文科省はこれを受け、同会議に、10年度までに具体的な目標を策定するよう依頼する。たとえば経済学では「経済学の概念と法則を説明できる」といった目標が、物理学では「問題の原理と法則を突き止める能力がある」などの目標が設定されることになる。

大学生の教育水準を維持しようという試みについては、英国が全国共通で分野別の到達目標を定めている。