『読売新聞』2008年3月19日付

大学院生 進む相互交流


大学の枠を超えて、研究や教育の場を提供する仕組み作りが進んでいる。

東大など他大学で研究や授業

日本が得意とする光科学分野で、東京大と慶応大、電気通信大は今年度から、キヤノンなど11社と「先端レーザー科学教育研究コンソーシアム」(CORAL)をスタートさせた。

大学や企業の枠を超えて、人材育成を図ろうという試み。光科学など物理分野では、中国やインドの台頭が目覚ましい一方、国内の学生の人気が低迷する。大学と企業がそれぞれの強みを持ち寄り、連携することで、学生へ魅力をアピールする狙いもある。

最初の試みとして、昨年10月から3か月間、3大学の大学院生と助教を対象に、企業の第一線の研究者が光ディスクの構造やレンズ設計について、実習と講義を行った。

来月からは、これを本格化させて、3大学の教員と企業研究者が、東大で週1回の講義と週3回の実験演習を行い、参加した大学院生に正式な単位を認める。実験演習で、東大が他大学の学生に単位を与えるのは初めてだ。

山内薫・東大教授は「異なる立場の大学院生が集まることで、互いに良い刺激になる。国際的に活躍できる研究者に育ってほしい」と期待する。

大学間の連携が深まる中、東大と京都大、早稲田大、慶大の4大学は昨年12月、包括的な大学院生の相互交流協定を結んだ。

「国際競争に勝つためには、日本のリーダーとなる大学院生の独立心が不可欠」(安西祐一郎・慶大塾長)「学術分野が細分化し、ひとつの大学ではすべてを網羅できない。学生に多様な選択肢と研究場所を提供したい」(白井克彦・早大総長)

調印式で4大学のトップが強調したのは、学生の流動性の必要性と激化する国際競争への危機感だった。

協定によって、4大学の大学院生は、他大学の教員の下で研究ができるほか、講義を聴いて単位を取得することが可能になる。

受け入れ期間は、修士課程が1年以内、博士課程が2年以内。大学院生が、武者修行で新たな分野に挑戦するとともに、人脈を広げるのが狙いだ。

協定をまとめた平尾公彦・東大副学長は「ひとつの大学に閉じこもりがちな大学院生に異なる論理、価値観を身につけてほしい」と話している。 (野依英治)