『中日新聞』2008年3月9日付

博士課程の競争率低迷 就職難で4年連続1倍切る


最高学位「博士」を取得する大学院博士課程の入学定員に対する志願者の平均競争倍率が、2007年度まで4年連続で1倍を切っていることが、文部科学省の調査で分かった。

博士号を取得しても国内での就職が難しいことなどが、進学を敬遠する原因になっているとみられ、教育関係者からは「優秀な人材が進学しなくなる」「海外の企業や大学に人材が流出する」と懸念する声が出ている。

文科省によると、全国の大学院博士課程の平均競争倍率は03年度は1・02倍だったが、その後、04年度0・99倍、05年度0・94倍、06年度0・90倍と年々低下。07年度の博士課程入学定員は計2万3417人、志願者は計2万773人で、競争倍率は0・89倍まで下がった。実際に入学したのも計1万6926人だった。分野別では最も競争倍率が高い教育系が1・68倍、続く芸術系でも1・65倍にとどまり、理学系は0・69倍、最も低い工学系は0・65倍だった。

文科省は、ほかの先進諸国に比べて大学院の体制が不十分として、博士課程を含む大学院の入学定員や学生数の増加を促し、博士課程の入学定員は1991年度の1・8倍、在学者も2・5倍に増えた。

しかし、大学や研究所などの研究職ポストはあまり増えていない。「博士号取得者は協調性に問題がある」などのイメージを持つ企業も多く、採用を敬遠する傾向がある。

このため、06年度の博士課程修了者の就職率は人文系33・0%、社会系41・3%など文系で特に低く、全体でも58・8%と低迷している。