『朝日新聞』2008年3月6日付

近大が1億円の残業不払い 大学と前人事部長を書類送検


近畿大学(大阪府東大阪市、世耕弘昭理事長)が職員に残業代を支払っていなかったとして、大阪労働局は6日、同大と前人事部長(48)を労働基準法違反(時間外割増賃金の不払い)容疑で大阪地検に書類送検した。同大が過去2年分を調べたところ、今回の送検分を含め職員、退職者563人に総額1億円が未払いとなっていたことが判明。同大は「事件を重く受け止め、労務管理システムを見直す」としている。残業代不払いをめぐり、大学側が立件されるのは極めて異例。

調べでは、近大は07年1〜6月、主任と係長職員34人に対し残業代計430万4466円を支払わなかった疑い。

同大が06年1月〜07年12月の2年間を調査したところ、職員、退職者563人に総額1億37万8819円の残業代の未払いが発覚した。いずれのケースも月45時間を超えた分を支払っていなかった。前人事部長らは「残業代を減らしたかった」と話しているという。

同大は03年7月、月30時間分を上限に、それを上回る残業代を支払っていなかったとして大阪労働局から是正勧告を受け、残業代の上限を撤廃。だが、業務改善策として04年4月、労使協定で残業時間を月45時間以内にすることを取り決めたという。

大阪労働局が07年9月、内部告発を受けて立ち入り調査した結果、月45時間を超える残業代の不払いが発覚。前回の是正勧告が守られていないため、同局は悪質と判断して書類送検に踏み切ったと見られる。