『朝日新聞』2008年3月3日付

国立大病院、81億円未収 法的手段使い回収も


全国の42国立大学にある45付属病院で、診察を受けた患者が支払っていない治療費などの未収金が06年度末までの累積で81億円に達していることが、朝日新聞の調べで分かった。治療費の未収金は、自治体病院の赤字を膨らませる一因として全国で問題になっているが、国立大学病院の経営も同様に圧迫されつつあることが裏付けられた。対策として、法的手段を使って回収に乗り出す病院も出ている。

すべての国立大病院(歯学部含む)に朝日新聞が07年10〜12月、アンケートした。協力が得られなかった大学には情報公開を請求した。未収金は「06年度末における退院患者と外来患者から得るべき診療費のうち、保険者(保険の運営団体)への請求分を除いた債権」と定義した。

未収金の累計は81億1396万円。経営規模の大きい旧7帝大(北海道大、東北大、東京大、名古屋大、京都大、大阪大、九州大)が全体の約3割を占め、23億2313万円に達した。

地域別では九州・沖縄(計8大学)が4分の1を占め、21億7526万円。関東(計6大学)も2割弱で計14億7595万円あった。最も多かった西日本の大学病院では6億円を超え、首都圏でも4億7000万円を計上した大学病院があった。

複数の大学病院は「03年に患者の3割負担が実施されたことが契機で増えた」と指摘。「低所得者の増加も影響している」(岐阜大)と見る大学も多い。

診療科別の未収金を開示した大学では、外科と産婦人科の多さが際立った。2億円を超す未収金に悩む東北大病院は「お産の集約化が未収金の増加に影響している」という。郡部の産科が減って仙台市にある東北大病院に患者が集中したのに伴い、出産一時金を納めない患者も増えたという。

未収金対策としては、カードによる分割払いや時間外の納付受け付けなど、支払い方法の多様化に取り組んでいると答えた大学が24病院あった。

専門の業者や法的手段を使って回収を図る病院もあり、東京医科歯科大や岐阜大は弁護士に回収業務を委託。悪質な場合は資産差し押さえも辞さないとしている。宮崎大も「確信犯」に対しては簡易裁判所による支払い督促に踏み切っている。

未収金問題を巡っては、解決策を探るために厚生労働省が昨年6月に検討会を設置。病院団体や保険者などと協議を続けている。