『読売新聞』2008年3月3日付

定員超過の国立大 授業料収入を没収


文部科学省は新年度から、入学定員を大幅に上回った国立大について、設定した超過基準を上回る学生の授業料を実質的に没収する制度をスタートさせる。

 ◆文科省、教育の質確保へ

大学の進学率が年々上がっていることや、2004年度の独立行政法人化以降、独自の収入源を増やそうとする国立大が増えていることが背景にあるようだ。私大には、大幅に定員超過した場合、補助金をカットする制度があるが、国立大への導入は初めて。

国立大の入学定員の超過率は、06年に平均で108%となった。地方などで定員割れが相次いだ私大は107%で、超過率は初めて逆転。関係者からは、国立大の適正な教育環境を維持し、教育の質を保証するためには、超過を抑制するべきだとの指摘が出ている。

国立大の各学生の年間授業料の目安である「標準額」は現在、53万5800円。定員超過率が基準を上回った大学は、超過分の学生数の授業料相当額について、国が支給する運営費交付金の使用を凍結、国庫に返還させる仕組みを設ける。

基準とする定員超過率は各学部ごとに設定し、新年度から3年間で段階的に厳しくする。入学する1年生は130%、09年度は120%、10年度は110%とし、これを超えた分の学生の授業料相当額を国庫に返還させる。国費留学生や休学者は在学者数から除く。

文科省によると、現在、全国には、86の国立大に358の学部があり、約45万7800人が在学している(07年5月現在)。内部調査では、1〜4年の定員超過率が110%を超える大学が47大学・93学部あり、2871人が超過に相当するという。

入学定員 国立大の定員は、2004年度に独立行政法人化されて以降、各大学が定員の増減を自由に決められるようになった。ただ、各大学は学部定員などを記載する中期計画を作成し、文部科学相の認可が義務づけられているため、大幅な定員の増減は事実上出来ないことになっている。