『徳島新聞』2008年3月1日付

徳大、「地域医療」を講義 医師不足解消へ、人材の育成目指す


県南部などでの深刻な医師不足の解消に向けて、徳島大学で新たに二つの取り組みが始まった。県と連携して大学院ヘルスバイオサイエンス研究部に新設された「地域医療学分野」では、一月から学生に地域医療の現状や課題を伝える講義をスタート。大学病院は高校生に外科医の仕事に興味を持ってもらおうと、施設を開放して手術を模擬体験する県内初のセミナーを二日に開く。

昨年十月に開設された地域医療学分野は、医療機関が連携して医師不足を補う方策や、地域医療を担う総合診療医の養成カリキュラムづくりに取り組んでいる。谷憲治教授ら二人が牟岐町の県立海部病院内の地域医療研究センターで診療に携わりながら、地域医療の課題を研究している。

新たな講義は、医学部医学科三、四年生を対象にした必修の「地域医療学」と「総合診療学」。県内の医師不足の現状や県の取り組み、都市と地方の医療格差、地域の介護施設の役割などを、谷教授がセンターでの経験も交えて指導している。

五月からは五、六年生を対象に、海部郡内の医療機関などで診療を体験しながら地域医療の現状や課題を学ぶ実習も始まる。谷教授は「講義や実習で学生の関心が高まり、地域医療に貢献できる医師が一人でも多く育ってほしい」と話している。

病院のセミナーは、産科や小児科と同様に全国的に不足が深刻化している外科医の確保が狙い。大学病院の手術室三室を開放して医師の指導を受けながら、手術着やマスクを着用して本物の医療器具で人形の腹の切開や縫合を体験する。

学生の出身校を中心に県内の高校十校に参加者を募ったところ、希望者が殺到。各学校による選抜の結果、一、二年生二十四人が参加することが決まった。病院は反響が大きいことから、来年度以降も継続的に開催することを決めている。

セミナーを発案した消化器・移植外科の島田光生教授は「実際の手術の雰囲気を体験することで仕事に魅力を感じ、一人でも多くの高校生が外科医を目指してくれれば」と期待している。