『読売新聞』山口版2008年2月28日付

[県予算2008]医師確保対策を強化


全国的に深刻化する医師不足。県内も例外ではない。とくに救急病院が小児科や産婦人科を閉鎖するケースが出始めているため、地域の公的病院などでの医師確保対策を強化する。

(松枝研介)

県医務保険課によると、2006年12月末時点の調査で、県内の医療施設に従事する医師は3376人。人口10万人あたり医師数は227・6人で、全国平均の206・3人を上回っている。だが、診療科別で見ると、産科・産婦人科が7・8人(全国7・9人)、小児科は11・3人(同11・5人)と、いずれも全国の水準を下回っている。

山口市内の中核的な医療機関の一つ、小郡第一総合病院は、産婦人科の常勤医師が2人から1人に減ったため、07年3月から正常分娩(ぶんべん)を中止。一方で、本来は危険性を伴う出産を主に受け入れてきた県立総合医療センター(防府市)は、周辺医療機関の分娩中止の影響で正常分娩が急増しているという。

このような現状を踏まえ、県は緊急課題の一つとして医師確保対策強化のために6768万円を計上した。

小児科や産婦人科に多い女性医師が、結婚や出産を機に医療現場を退くことが医師不足の一因となっていることから、女性が働きやすい環境づくりを推進する2病院(女性医師が3人以上いる病院が対象)に各150万円を補助する。ワークシェアリングや長期の育児休暇制度、育児中の宿直免除などの取り組みをモデル的に進め、将来は他の病院にも広げたい考えだ。

同時に、地域医療全体の「即戦力」を確保する目的で、県外の医師ら7人を県職員として採用し、医師確保が難しい公的病院に5年間派遣するドクタープール事業を開始。県内での就職を希望する研修医5人には、研修資金(月額20万円)を貸し付け、貸付期間と同じ期間を県内で勤務すれば返済義務を免除する。

このほか、効率的な地域医療のあり方を研究するため、山口大医学部に寄付講座「地域医療学講座」を設ける。効率的な医師配置や、幅広い診療科目を見ることができ、過疎地域の医療を担う総合診療医の養成などが研究テーマ。08年度から2年間、各年度2500万円を充てる。

今村孝子・健康福祉部長は「地域で安心して医療を受けられるよう、即効性のある対策を中心に取り組む」と話している。