『東京新聞』 2008年2月27日付夕刊

大学など特許出願9090件 生き残りかけ研究活用 3年間で3.7倍に


国公私立の大学や短大、高専などの高等教育機関が二〇〇六年度に国内外で出願した特許は九千九十件に上り、比較できる〇三年度の三・七倍に増えたことが二十七日、文部科学省のまとめで分かった。

出願した特許が商品化につながるなど実際に活用された特許実施件数は二千八百七十二件で、一五・五倍とさらに大幅な伸びを示した。

文科省は、大学によるベンチャー企業の創設など研究成果の社会還元を目的に〇一−〇六年度の六年間に実施した「大学知的財産本部整備事業」など五つの施策の効果を「総合評価」で検証。

この間に投入した予算の総額が約千百億円だったのに対し、経済的な効果は倍以上の約二千三百億円に相当すると見積もっており、文科省は「法人化した国立大をはじめ、各大学が生き残るため研究成果を積極的に活用しているのではないか」と分析している。

評価結果によると、大学などによる〇六年度の特許出願は国内七千二百八十二件、国外千八百八件。うち国立の大学などが計七千三件で全体の77%を占め、五百五十二件の京都大が最も多かった。私立は千七百十八件、公立は三百六十九件だった。

一方、出願した特許が実用化した件数では東大の八百九十件が最多。特許料収入などを得たのは九十八機関で、収入総額は約八億百万円。青色発光ダイオード製造技術の基礎を確立するなどした名古屋大の約一億六千四百万円が一位だった。

このほか、大学間などの共同研究は一万四千七百五十七件で、〇三年度の約六割増、民間企業などからの受託研究も一万八千四十五件で約三割増えた。

<知的財産本部> 研究活動から生まれた特許や発明を大学などが一元的に管理するための組織。国の支援を受け、現在43大学が置いている。ほかに独自に設置している大学もある。研究者が取得した特許などが放置されるのを防ぐほか、特許使用を求める企業への情報提供や申請手続きの窓口一本化を図っている。新商品の開発やベンチャー事業を創出して研究成果の社会還元を目指すとともに、特許料収入の配分を明確にして研究意欲を促すなどの狙いもある。