『京都新聞』2008年2月27日付

京大の出版物、HPで公開
学術成果を発信へ


京都大付属図書館(京都市左京区)と京都大学学術出版会(同)はこのほど、京大の学術研究成果の発信に向け、出版会の刊行物の一部について、京大のホームページで公開を始めた。出版社と大学が連携して出版物を公開していくのは日本では初めて。第一弾として、「歴史としての生命」(村瀬雅俊基礎物理学研究所准教授著)など5冊を掲載した。

京大は付属図書館が中心となって、部局の紀要論文や学位論文、学術誌の掲載論文など、京大の研究者の学術研究成果を、電子書庫「京都大学学術情報リポジトリ」で一昨年から無償で公開している。尾池和夫総長の著書も含めて1万件以上が掲載され、学外利用も増えている。

出版物の無償公開は版元の利益に反するが、「新しい学術コミュニケーションを開き、研究のすそ野を広げ、研究成果の結晶としての本の意味が見直されることで『研究書離れ』を克服したい」(京都大学学術出版会)との考えから協力することになった。

まず、アジア・太平洋出版連合出版賞金賞(2005年)を受賞した「Ecological Destruction、 Health、 and Development」(古川久雄名誉教授ら著)など高い評価を得ている5冊について、著者の同意のもとに公開した。今後も定期的に出版物の電子化と公開を予定している。

付属図書館の村上健治電子情報掛長は「大学の研究成果を、誰でも読めるようにするのがリポジトリの理念。学術研究が身近なものになれば」と話している。

「京都大学学術情報リポジトリ」は、京大付属図書館のホームページから。