『河北新報』2008年02月26日付

東北州誕生で自立経済圏を 秋田県道州制懇話会が中間報告


秋田県道州制ビジョン懇話会(会長・渡部毅ノースアジア大教授)は、東北6県で構成する「東北州」を想定した道州制イメージの中間報告をまとめた。道州制を「一国に匹敵する自立した経済圏を形成するためのツール」などと位置付けた上で、東北州が誕生した場合、市民生活や福祉、社会資本の整備などがどう変わるのかを例示した。

中間報告は、経済圏形成のほかに「分権(地域主権)型社会を実現するための制度」「権限と県境の二つの壁をなくす制度」と道州制を定義し、(1)地方公共団体は道州と市町村の二層制(2)国は外交、防衛、通貨などの役割に専念(3)施策の重複や企業、大規模イベントの誘致合戦の解消(4)国内外の諸地域との連携、競争による地域経済力の底上げ―など役割や利点を掲げた。

また、内政に関する権限に加え、財源や人材が道州と市町村に移譲されたことを前提に、東北州のイメージを提唱。市民生活では、東北の気候や特徴に合わせてサマータイムを採用したり、「青森ねぶた休暇」といった独自の制度を導入したりすることで伝統文化の継承、地域社会の一体感を醸成できるとした。

地域内の道路や空港、港湾なども統一的なビジョンの下で整備されるほか、大学・研究機関の得意分野に特化した開発による新技術、新規産業の創出、的確な農地集積に伴う生産性の向上なども期待できるとしている。

中間報告は、「都道府県合併の場合は市町村との間に二重行政が残り、道州制に比べ市町村への権限、財源移譲が少ない」と分析。州都への一極集中や道州間格差など、県民が抱きそうな不安には、「政治州都と経済中心地を分離することで一極集中を緩和できる」「道州間の財源調整システムを構築することで対応する」とした。

自民党の道州制調査会は中間報告書で、2015―17年に道州制に移行すると明記、日本経団連の報告書では13年までに関連法案を制定し、15年に導入すると掲げており、懇話会は「秋田でも遅れることなく議論を進めていく必要がある」と提言している。