『朝日新聞』2008年2月21日付

私大から公立大へ 全国初の転換を高知工科大と県が準備


公設民営方式で運営されている高知工科大学(高知県香美市)を公立大学法人化させる準備を高知県と同大が進めていることが21日、分かった。順調にいけば09年4月にも、事実上の「県立大」となり、私立大が公立大に転換する全国初のケースになるという。県は、財政への影響などを含め慎重に検討した上で、県議会の議決などを経て国に申請する方針。

高知工科大は、97年4月開校。土地代や建設費など計約268億円を県が提供し、開校後の運営費用は、県が中心になって作った財団が前身の大学法人が負担している。大学間競争の激化で受験生は減少傾向で、07年度の入学者は定員の8割程度だった。

同大事務局によると、年間の運営費約42億円のうち、約29億円は授業料など学生納付金、12億〜13億円は国からの私学助成金。公立法人化すると私学助成金は打ち切られるが、大学側は「私学助成金の倍程度の地方交付税が県に支給される」と見込んでいる。

これにより、授業料や実習費などを合わせて現在年約124万円になる学生の負担は、年約50万円程度に抑えられる見通し。同大の橋本大二郎理事長は「受験生の国公立志向も強まっている。前向きに取り組んでいきたい」と話す。同大事務局は「私学特有の就職指導や学生育成のノウハウを『県立大』として生かせれば、学生増加につながる」と期待している。

文部科学省大学振興課によると、私立大が公立大学法人化するには、国に対して学校法人の廃止申請、公立大学法人の設立申請、設置者変更申請の三つが最低限必要だが、廃止申請以外は大学設置・学校法人審議会の審議がいらないという。ただ、「なにぶん初めてのケースなので、今後詳細な検討をしたい」としている。