『長崎新聞』2008年2月6日付

県が「治験」産業を創出へ 製薬企業、大学などでネット構築


新薬の研究開発段階で人を対象に行う試験の「治験」を県内産業として育成するため、県は製薬関連企業や大学、県内医療機関のネットワークづくりを支援する事業を新年度に実施する。製薬企業の治験を積極的に受け入れ、県内医療機関の人材育成や大学の研究促進、新規産業創出による雇用増加などを見込む。

新規事業は「創薬・医工連携関連産業(治験産業)創出プロジェクト支援事業」。県は「新産業創造構想」を策定しており、大学の研究成果を生かし、大手製薬会社の研究開発センターなどの誘致により、本県を最先端の創薬研究開発拠点とする目標を掲げる。ネットワーク支援は、同構想実現の一環で実施する。

県新産業創造課によると、新薬の研究開発は、その基になる化合物の選出や動物試験などで五−八年を要する。人を対象にした「治験」だけで三−七年が必要で、発売の承認を得るまで九−十七年はかかるという。日本は治験費用が海外に比べてコスト高のため、製薬業界には効率的で質の高い治験環境の需要がある。

ネットワーク発足で、治験の受け入れ態勢を県内に充実。製薬業界の企業ニーズを満たし、治験にかかる研究費を県内で取り込む。また、同業界とのパイプを太くし、大学の研究成果を新薬の事業化につなげるほか、将来的に製薬関連企業の誘致も視野に入れている。

同課は「治験で新薬のデータを取り扱う作業を通じ、地場医療機関の人材育成のほか、先端医療の知識が得られる。患者も、海外で認められながら、国内で承認されていない新薬の高度な治療に触れ、選択肢が広がる。本県を創薬研究開発の拠点とする第一歩にしていきたい」としている。