『日刊工業新聞』2008年2月6日付

東大、国際・産学共同研究センターを来月末に廃止


東京大学は国立大学の地域共同研究センターの一つである「国際・産学共同研究センター(CCR)」を3月31日付で廃止する。自治体から研修生を受け入れる産学連携人材育成と研究者データベース(DB)は、全学事業にあたるため産学連携本部へ移管し、個別の研究プロジェクトは小規模の新組織で引き継ぎ、それぞれ機能強化する。学部・研究科・研究所・センターなどの部局は大学自治の象徴でもあり、廃止は異例。大学改革でネックとなる“学内組織の壁”を壊す取り組みともいえそうだ。

国立大学の旧来の産学連携は、工学部系の地域共同研究センターが手がけていた。東大のCCRは96年度に設立。しかし04年度の国立大学法人化に合わせ、03年度に法人の発明・特許を管理する知的財産本部(東大の名称は産学連携本部)が発足。役割が重複し非効率になっていた。そのためセンターの名称を残しつつ知財本部に統合する大学が増えているが、東大は機能強化に適した形を考えて廃止を選んだ。

国立大は法人化後、全学予算が運営費交付金の一括払いとなり、学内の予算・ポスト再配分の自由度が高まった。しかし改革が不十分だとみる有識者が指摘するのが、研究科や研究所など各部局の自治だ。教員の採用を含む人事権など部局教授会の発言権が強い。

また、文部科学省は社会ニーズの変化に伴い、特定使命を持つ研究所などの見直しが必要と考えている。今回は産学連携部局の整理だが、他部門でも柔軟な再編が必要になってきそうだ。

CCRの場合、学内研究者データベース(テーマ件数1754件)への問い合わせから共同研究に結び付くのが15%と高率なのが特徴。自治体から研修生を受け入れる産学連携の人材育成(8年間で48人が受講)と合わせ、4月から産学連携本部に移管する。

一方、十数件の研究プロジェクトは現場直結のため、生産技術研究所と先端科学技術研究センターが設立する新組織で運営する。