『日経ネット関西版』2008年2月2日付

先端研究拠点、大学競う――阪大は感染症など、立命は地球環境


関西の大学が先端研究の中核拠点を相次いで整備する。大阪大学が感染症などの克服を目指す世界規模のセンターを設けるほか、立命館大学も地球規模の環境問題に取り組む。各大学とも有力研究者を擁するなどの強みを伸ばし、地球温暖化やエネルギーの枯渇、新型感染症など社会が直面する緊急の課題に対応。国立大の法人化を機に強まる大学間競争を勝ち抜く。

阪大は2009年3月までに、感染症やアレルギー疾患の克服を目指す世界規模のセンターを設ける。約25億円を投じて、吹田キャンパス(大阪府吹田市)内に10階建て(延べ床面積約9000平方メートル)の研究棟を建設する。研究室のほか、最新の情報をやり取りできる国際会議スペースも備える方針だ。

構想の核となるのが体を健康に保つ免疫の研究でノーベル賞級の成果を上げる審良(あきら)静男教授。民間調査会社によると、ここ2年で世界で最も注目されている研究者とされており、同教授を軸に国内外から有数の研究者を招き、阪大を免疫学の一大拠点として世界に売り込むことにした。

国際社会では、新型インフルエンザをはじめ新たな感染症の流行が懸念されている。研究の成果は予防や治療に役立つ。 立命館大学は文科系から理工系まで広範な専門家が在籍している強みを生かし、4月にも地球温暖化や資源の枯渇といった地球規模の環境問題に挑む研究機構「立命館グローバル・イノベーション研究機構」を立ち上げる。

「エネルギー」「材料資源」「環境」「食糧」「安全・安心」「医療・健康」を緊急課題に指定。専門が違う約50人もの教員らがアイデアや研究成果を持ち寄り、新技術の開発や対策立案を加速したい考え。これだけ異分野の専門家が手を組む試みは全国の大学でも珍しい。

近畿大学は3月、北海道恵庭市で、次世代のバイオ燃料を研究する施設を稼働する。近大の理工学部は、植物を使った固形燃料「バイオコークス」の製造技術で他大学を先行する。新たに「近大バイオコークス量産実証実験センター(仮称)」を開き、飲料工場などから出る茶葉やコーヒーなどのかすを固形燃料に作り替える技術を磨く。

地球温暖化対策や原油高を背景にバイオ燃料への期待が高まっており、大学の存在感も増せるとの狙いもある。