『沖縄タイムス』社説 2008年2月2日付

[教育再生会議]中途半端なまま終わった


安倍晋三前首相の肝いりで二〇〇六年十月に発足した教育再生会議は、一年三カ月余りの活動を締めくくる最終報告を福田康夫首相に提出し、役割を終えた。

〇七年一月の第一次、同六月の第二次に次いで今回が三度目の報告になるが、結局、この機関は何だったのだろう。

委員の気負いとは裏腹に、首をかしげてしまうような議論や提言も少なくなかった。

学校選択に競争原理を持ち込む教育バウチャー(利用券)制度は、一時期、教育再生会議が導入に意欲を示していたが、福田康夫首相の下で「市場原理の導入は教育になじまない」(渡海紀三朗文部科学相)として取り下げられた。

第三者機関による学校などの外部評価制度についても「中央統制につながる」との指摘を受けて見送られ、最終報告書には盛り込まれなかった。

議論の中では、母乳育児、子守唄の励行、テレビ視聴の時間制限など、余計なお世話だといいたくなるような話も飛び出した。

十分に練られたとは思えない、思いつきのような案は、文部科学省や自民党の中からも冷ややかな反応を受け、安倍首相が退陣して後からは、後ろ盾を失って抜け殻のような会議になった。

教育再生会議とは何だったのか。

再生会議は「ゆとり教育」の転換を促すとともに、保守色、国家統制色の強い教育基本法改正と教育関連三法改正の推進役を務めた。

「戦後レジーム(体制)からの脱却」という安倍前首相が掲げた政策目標を教育改革という側面からサポートしたのが再生会議だった、といえよう。

福田康夫首相は、最終報告を受け、新たな教育改革推進機関を二月中に設置する意向を明らかにした。

だが、福田首相が教育改革に対してどのような考えを持っているのか、まだはっきりしない。

再生会議の最終報告が「重要なのは提言の実行とフォローアップ」だとくぎを刺したのは、福田首相の指導力発揮を強く求めたものだ。

最終報告は「直ちに実施に取りかかるべき事項」として(1)徳育の教科化(2)英語教育の大幅増加(3)大学の九月入学の促進―など二十七項目を列挙した。「検討を開始すべき事項」として「六・三・三・四制」の弾力化など九項目を挙げている。

再生会議は、安倍首相の退陣で中途半端な形で役割を終えた。同会議の置き土産をどう料理するか。教育改革は待ったなしの重要課題だ。