『読売新聞』2008年1月30日付

教材作り、企業と協力…東京学芸大


東京学芸大学は、企業と協力して、社会の仕組みを学ぶ教材や授業計画作りに取り組んでいる。

教育系大学ではまだ珍しい産学連携を進め、子供たちに役立つ知識や技能を教えるとともに、外部から研究費を確保する狙いがある。

同大付属大泉小学校で昨秋、みずほフィナンシャルグループ社員が担任教諭とともに、5年生の家庭科の授業で教壇に立った。

移動教室で着る3種類の防寒着を購入する設定で、児童はカードに描かれた衣服から色やブランドなどの好みに応じて商品を選ぶ。合計額は5000円未満から3万円以上まで。教諭が「3万円を超えると、外食ができなくなるよ」と言うと、児童たちは金額も加味して考え直した。最後に、みずほ社員が企業や店の間をお金が流通する仕組みを解説した。授業を受けた増田晴香さんは「バランスを考えた買い物の大切さが分かった」と語る。

共同研究は、金融の教育の普及に力を入れようとしていたみずほ側が提案。法人化をきっかけに、産学連携を模索していた学芸大も「子供たちが社会の仕組みについて理解を深めるのに役立つ」として、2年前から一緒に取り組みを始めた。

これまで、預金や為替など金融に関する小、中学生向けのテキストを作成。教員向けに指導法の研修会も開いている。みずほ側には「金融への理解が深まるとともに、企業のイメージアップにもつながる」(CSR推進室)の利点がある。

学芸大は、みずほ以外にも8団体と連携。研究費は平均年100万円ほどになる。電通とは、昨年から同大付属世田谷小学校で広告の授業を行っている。5年生は先月、ビデオカメラを片手にCM制作を体験した。

テレビやインターネットから流れる情報には作り手の意図が盛り込まれていることを知り、自分の考えを他人に伝える力を養ってもらおうという試みだ。男子児童は「15秒のCM制作でも何人もが協力しており、チームワークの大切さを実感した」と話していた。(米山粛彦)