大学版「学習指導要領」を文科省が企む

佐賀大学の豊島です.
文部科学省が大学版学習指導要領と言うべきものを企んでいることが明らかに
なりました.長崎新聞のウェブ版に今日の記事として載っています(末尾に転
載).
「大学の教育内容に指針 文科省、学部専門分野別に」(01/30 02:07)
 http://www.nagasaki-np.co.jp/f24/CN20080130/ma2008012901000891.shtml

国立大学独法化問題の時に私は,将来,教科書検定や学習指導要領という悪夢
に見舞われると予測(1, 2)しましたが,残念ながらこれが当たってしまったよ
うです.

小中高のように法規で縛るという剥き出しのやり方は取らず,「評価」の形で
実質的な強制をしてくるでしょう.このための道具にされようとしている日本
学術会議に「ノー」と言わせる活動が当面重要だと思います.

しかし,すでに「評価」で洗脳されかけている大学人には,「やむを得ない」
とか,「当然のこと」という“ナイーブな”(3)反応をする向きが多いのでは
ないかと心配します.

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(1) 「国立大学行法化 -- なぜ敗北したか,どう巻き返すか」
 (「多分野連携シンポジウム 大学界の真の改革を求めて」での私の報告)
 2003年9月27日,東大本郷 山上会館
 http://pegasus.phys.saga-u.ac.jp/znet/sympo030927/toyoshima.html
 http://www003.upp.so-net.ne.jp/znet/znet/sympo030927/toyoshima.html
 「その先には『教科書検定,学習指導要領』という悪夢がある」

(2)「 政府が実施を急ぐ独立法人化 大学の“独立”は逆に失われる恐れ」
 「週刊金曜日」2002年4月19日号,45〜47ページ
 http://pegasus.phys.saga-u.ac.jp/UniversityIssues/kinyoubi020419.html
 「『中期目標』として挙げられている項目は抽象的であり、大学に
  まで『教科書検定』や『学習指導要領』が押しつけられても不思
  議ではない。」
(3) 日本語でなく英語での意味.

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(長崎新聞ウェブサイトより転載)
大学の教育内容に指針 文科省、学部専門分野別に(01/30 02:07)

 文部科学省は29日までに、大学の学部(学士課程)の教育期間で学生が身
に付けるべき知識や技術など教育内容や到達目標を示した指針を、各専門分野
ごとに策定する方針を固めた。

 指針には高度な専門性が求められ、学問の自主性も尊重する必要があるた
め、科学者の代表的機関である日本学術会議に審議を依頼する予定。大学教育
について同会議への審議依頼は記録上、1949年以来、59年ぶりという。

 大学の教育内容は原則として、各大学の自主・自律的な裁量に委ねられてい
る。文科省は指針に強制力や拘束力はないとしているが、国が一定の方向性を
示せば、一連の大学改革で大きな転機になりそうだ。

 文科省は、指針策定により学生の卒業認定が厳格になるとともに、各大学の
教育内容や実績を確認、評価しやすくなり、大学教育の質向上が図れるとして
いる。

豊島耕一
http://blog.so-net.ne.jp/pegasus/
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