『神戸新聞』2008年1月26日付

膜工学で世界的な水不足に対応 神戸大が産官連携


神戸大学は、海水の淡水化などに使う膜工学に関する研究開発の産学官連携を、川崎重工業(神戸市中央区)や新産業創造研究機構(NIRO)などと本格化させている。世界的な水不足を背景に、水資源の確保に役立つ膜工学への関心が高まる一方、大気環境の保全など応用範囲も広がっているという。神戸大は海外の大学とのネットワークも生かし、世界的な拠点を目指す。

神戸大は昨年、本格的な膜工学の教育・研究拠点としては国内初の「先端膜工学センター」を開設。さらに、産業界とセンターを橋渡しする連携組織「先端膜工学研究推進機構」も設立。川崎重工業や東レなど企業約二十社が参加している。

推進機構は、会員企業に対して産学連携プロジェクトの立案、共同研究や委託研究のあっせんを行う。また、企業の研究者を同センターに派遣するなど人材育成面でも連携を深める。

膜工学は、海水の淡水化や上下水の処理に加え、二酸化炭素を分離するなど応用分野も広がっている。とくに、水処理分野は、二〇二五年に世界の人口の三分の二が水不足に直面し、世界の水ビジネスは百兆円規模になるとされ、成長が期待されている。センター長兼機構長の松山秀人教授は「海外の大学にある膜センターとも連携して、膜工学に関する世界の拠点にしたい」と話している。(段 貴則)