『西日本新聞』2008年1月15日付

新臨床研修制度


医学生が医師免許を取得後の2年間、医療の現場で診療経験を積む制度。厚生労働省が2004年度から義務化し、全員が内科や外科、小児科、産婦人科などを必ず経験する制度に改めた。制度導入前は多くの新人医師が出身大学の医局にとどまって研修を受けていたが、新制度に合わせて学生や病院の希望に応じて研修先を決めるマッチング方式が導入され、都市部の民間病院に人気が集まった。大学病院が人手不足に陥り、地方病院への医師派遣を停止する事態が相次いだ。

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大学病院間の研修支援 専門医育成に補助金 新年度から文科省 民間流出防止へ 地域の医師不足緩和

若い医師の大学病院離れを受け、文部科学省は2008年度から複数の大学病院が連携して専門性の高い医師、研究者を育成する取り組みに財政支援する。優れた人材を大学にとどめ、大学病院による医師引き揚げで深刻化している過疎地などの地域医療の人材不足を緩和する狙いもある。08年度は全国15事業を選び、1億円ずつ補助する方針で、九州の大学も関心を寄せている。

文科省大学病院支援室によると、補助の対象例は肺がんの先進的な手術をする大学病院と抗がん剤治療に力を入れる大学病院、肺移植を手掛ける大学病院が協力し、肺がんの総合的研修プログラムを設けるといった取り組み。

04年度に始まった新臨床研修制度では、医師免許を得た新人が研修内容や待遇が充実した都市部の民間病院などへ続々と流出。制度導入前は新人の7割以上が大学病院にとどまっていたが、06年度には半数を割り、大学病院が地域の医療機関に派遣していた医師を引き揚げる事態が全国で発生した。

九州でも、大分県竹田市の竹田医師会病院が救急病院の指定返上に追い込まれたほか、産科や小児科を休診する病院も相次いでいる。

文科省の補助は、育成対象として2年間の臨床研修を終えた若手医師を想定しており、大学病院の最新技術や知識を大学の壁を越えて習得してもらい、各医療分野のスペシャリストを養成する。

07年度内にも公募する方針で、九州の大学も「魅力的な研修プログラムを作るために前向きに検討したい」(九州大)など関心を寄せている。

文科省大学病院支援室は「大学病院の魅力を高め、ひいては医師不足の改善につなげたい」としている。