『読売新聞』2008年1月16日付

大学寄付集め 競争激化


大学があの手この手で寄付集めに知恵を絞っている。慶応大が150年、東京大が130年、早稲田大が125年、東北大が100年と、ここ数年、大学創立の節目の年が重なり、大学間の競争も激しい。企業頼みは通用せず、卒業生からの寄付の掘り起こしに躍起だ。

東大や早大では、高額寄付者の名前を刻んだ銘板を安田講堂や大隈講堂に掲げたり、インタビュー記事をホームページで掲載したりして、卒業生の競争心と名誉心をくすぐる。インターネットでクレジットカードから簡単に寄付できる仕組みを取り入れたり、記念品を販売したりする大学も多い。大学の寄付集めや資金運用は、新しいビジネスとしても注目されている。

寄付金集めに大学が力を入れるのは、国からの運営費交付金や私学助成が削減される中、独自に使える資金を確保するため。東大の大学総合教育研究センターが、全国691大学を対象に行った調査によると、国立大の85%、私立大の83%、公立大の15%が寄付募集の経験があった。規模が大きく、創立の古い大学ほど、実施率が高い傾向があった。

200億円を目標に掲げる早大。「旧帝大も参入して、企業からの寄付集めは厳しくなった」と、上田康史・募金課長は嘆く。卒業生への働き掛けを強化。40万人に手紙を送り、8万円以上を寄付した1万7000人分の銘板を、第1弾として大隈講堂の壁に掲げた。

大阪医科大は、国沢隆雄理事長自ら各地の同窓会を巡り、「日本一の医大にしたい」と訴える。

東北大は、教授、准教授など、教職員のランクごとに寄付の目安を定めてホームページで公開した。学内から「やりすぎ」との声も上がる。

企業は、寄付の資産運用も視野にこうした大学の動きに注目する。野村証券は2003年から大学担当部門を設置した。大森勝・法人企画部長は「大学の生き残りに財務基盤の強化は欠かせない。我々が培ってきた知識やネットワークが役立つ」と意気込む。国立大2校に社員を派遣して、趣意書の書き方から、卒業生名簿の整備、勧誘方法まで、寄付集めの助言を行う。

しかし、東大の調査でも、各大学の卒業生で寄付に参加した比率は「10%未満」が40%と、まだまだ低いのが実情。教職員や新入生の保護者、取引企業など、集めやすいところから集める形になりがちだ。

大学総合教育研究センターの片山英治・共同研究員は「寄付は本来、卒業生が在校生を支援する『世代間の助け合い』が基本だ。大学は寄付の使途を明確にして、もっと戦略的に募集に取り組む必要がある」と指摘する。(杉森純)