『日本経済新聞』2008年1月12日付

国立大 定員超過に制限
文科省 授業料分を国庫納付


文部科学省は国立大学にたいし、定員を一定基準以上超えた数の学生を受け入れた場合、超えた分の学生が払う授業料相当額を国庫に納付させる方針を決めた。二〇〇八年度から実施する。「定員を超えた数の学生がひしめく教育環境は望ましくない」(同省)ため。私立大には定員を大幅に超過した場合に国の補助金が削られる仕組みがあり、国立大にも同様の制限を設けることにした。

〇八年度はまず、定員を三〇%以上超えた分を国庫納付の対象とする。〇九年度は二〇%以上、一〇年度は一〇%以上と段階的に厳しくしていく方針だ。新入生については入学定員に対する入学者数、二年生以降は収容定員に対する在学者数で判断する。毎年十一月一日を算定基準日とする。

人数は学部単位で数える。定員が百人以下の小規模学部についてはブレが出やすいとして、一〇年度も基準を二〇%以上とする特例を設ける。外国人留学生のうち国費留学生や外国政府派遣留学生は在学者数に含めない。休学者や留年者も原則除外する。

国立大は〇四年に「国立大学法人」に衣替えした。それまでは学生が納めた授業料はいったん国に入り、国が必要な額だけ大学に配分する形だったため、たくさん学生を入学させても大学側にメリットはなかったが、法人化後は各大学が授業料を直接受け取る方式に変わり、入学者数が多いほど「実入り」が良くなる仕組みになった。多くの国立大が収入増を狙って定員を上回る学生を受け入れているとみられる。

私大には定員オーバーに対する補助金カットというペナルティー制度がある。国立大だけが定員を超過してもかまわない状態に「バランスを欠く」との指摘が根強かった。「定員をオーバーした状態では授業などに支障がでかねない」(文科省国立大学法人支援課)ことから、国は半ば強制的に授業料を“召し上げる”ことで、学生増に歯止めをかけたい考えだ。