『朝日新聞』 2008年1月12日付

センター試験 国立大、科目絞る動き 個性を重視


毎年1月に行われる大学入試センター試験で、科目数を減らす動きが一部の国立大で出てきている。学力低下を防ごうと、国立大学協会(東京)は幅広く5教科7科目を受験生に課すよう提言し、04年度以降このルールに従う大学が増加。だが、特定の才能を重視したい大学や志願者を増やそうとする大学が、違う路線を取り始めた。「全入時代」を前に競争が激化する中、動きが広がる可能性もある。

08年度のセンター試験は今月19、20の両日に実施される。90年から始まったセンター試験は年々利用大学が増え、今回は国公私立合わせて過去最多の622大学(国立82、昨年9月末現在)が利用予定。私大は3科目前後が多いが、国立大は00年の国大協の提言に従い、国語、数学、外国語、理科、地理歴史・公民(国大協は1教科とみなす)の5教科から7科目を課すところが増えてきた。

だが、増加はここ数年頭打ちだ。文部科学省のまとめでは、08年度に5教科7科目以上を課す国立大の学部は340でほぼ前年並みの割合。一方で科目を減らす大学も出てきた。

信州大農学部は08年度から、5教科7科目を課していた食料生産科学科と応用生命科学科の前期を、地歴・公民が不要な4教科6科目に。入試課は「専門科目の多くは生物や化学が基礎となる。理科系が得意な人が合格しやすいようにした」と説明する。

埼玉大経済学部は08年度、国語、外国語、地歴・公民の3教科から3科目を課すセンター入試枠を導入。前期220人のうち20人のみの枠だが、2次の個別学力検査もない。入試課は「18歳人口が減り、経済学部の倍率も下がってきていた。いかにして受験生を集めるかを考えた」とする。残り200人には5教科7科目を課し、異なる方法で入った学生同士の競争を期待する。

高知大人文学部国際社会コミュニケーション学科はもともと5教科6科目を課していたが、08年度は3教科3科目に。国語と外国語からの2科目に加え、地歴・公民など3教科の中から1科目を選ぶ。入試課は「国語と外国語の能力にたけた学生がほしい」。

国大協関係者は「志願者が集まりにくい地方の国立大を中心に、5教科7科目を続けるのは難しくなっている」。

大手予備校の調査では科目数を減らす国立大が前年よりも人気を集めているという。代々木ゼミナールの坂口幸世・入試情報センター本部長は「3、4科目にすれば、従来は国立大を受けなかった層にも受験してもらえる」と分析。河合塾の服部周憲・経営企画部長は「定員の一部は科目数を減らして選抜するなど『複線化』していくのではないか」と予測する。