『読売新聞』2008年1月8日付

「大学教師力」磨く大学院…山形大が設置方針


全入時代を迎えた大学の教師力向上に向けた取り組み(FD)が大学設置基準で今春義務化されるのを受け、山形大学(山形市)は、FDの専門家を養成する全国初の専門職大学院を設ける方針を決めた。大学の教職員らを対象に、板書の仕方や学生とのコミュニケーションの取り方など、授業改善の手法を基本から教える。2010年春の設立を目指す。

同大では、7年前から取り組んできたFDの実績をもとに04年、山形県内の公立大や私立大、短大計6校で「FDネットワーク樹氷」を結成し、共同して国内外の先進大学の視察や研究会を重ねてきた。昨年4月からは、授業の問題点を洗い出し、“処方せん”を出す「授業改善クリニック」を学内外向けに始め、全国的な関心を集めている。

取り組みを通して、FDを組織的に進めるには経済的、人的な手当てが不可欠で、時には大学の理念や経営方針の見直しも必要になるといった認識が大学の経営者に不足しており、具体的な授業改善法がわからない教員が多いこともわかってきた。FD専門の教員増を図ることも難しいため、授業改善のノウハウ共有を進める専門職大学院の設立構想を抱くようになった。

山形大でFDを担当する小田隆治学長特別補佐のほか、同大の高等教育研究企画センターの教員が中心となり、学外の専門家と連携し、カリキュラム開発や人材の養成に取り組む。会話能力や板書、教材教具の開発、授業評価アンケートの作り方など授業技術を磨く一方、科目内容の整備やFD研修を徹底させるための経営術も学ぶ。このため対象を事務職員にも広げる。

同大の結城章夫学長は「国内の大学が競争ばかりしていては共倒れになる。大学は学生のためにあるという共通認識のもと、連携して教育力を向上させたい」と話している。

FD(Faculty Development) 多様な学生に対応するため、授業の内容や方法の改善を図る組織的な研修や研究を指す。文部科学省の2005年度調査では、全国713大学の8割が実施しているが、大半が講演会の開催程度。どうやって実効性を上げる内容にするかが課題になっている。