『読売新聞』2007年12月30日付

国の研究費不正防止、30大学・機関立ち入り調査へ


国から配分された公的研究費の不適正な管理・使用が相次いでいることから、文部科学省は1月から、研究費が多く投入されている大学と研究機関30か所を対象に現地の立ち入り調査を開始することを決めた。

研究費を投じた個々の研究事業に対して行う現地調査はあるが、機関全体の運営や管理体制まで調査対象を広げるのは初めて。使用や管理に問題があれば改善計画の提出も求める。

調査は2月までの2か月間、各機関にそれぞれ同省担当官3〜4人が訪問して行う。学長など組織のトップや内部監査・不正使用防止の担当者から、研究費の管理体制や、不正防止に向けた活動状況の聞き取りを行い、証拠となる経理関係の書類の提出を求める。

対象の30か所は、国公私立大や独立行政法人、財団・社団法人、民間企業など。具体名は公表されていないが、同省の「科学研究費補助金」の配分額や配分対象の研究課題数が多く、過去に研究費の不正使用問題が発生して対処した経緯のある機関などを選定した。

同省は、2004〜06年度までの3年間で、30件の研究事業で不正を確認。合計で5億2700万円余りの返還命令を出した。そのほとんどが、物品の架空請求やカラ出張などだ。

相次ぐ不正に、同省は今年2月、機関に対して研究費の管理徹底と不正防止計画の策定を求める指針を決定した。今月公表された約1550機関へのアンケートでは、87%の機関が「研究費管理の責任体制を明確にしている」と回答したものの、不正防止計画を策定したのは、わずか17%にとどまっている。同省調査調整課は、各機関の自浄能力だけに頼らず、現地調査で指導力を強める方針だ。

同省は来年度以降も、年間100機関のペースで調査を行う予定。

研究費不正を巡っては、独協医大(栃木県)で今年11月、公的研究費約1億7200万円を不正にプールして、学長ら20人以上が処分を受けたほか、早稲田大学で昨年12月、研究費を不正受給した教授が辞職する問題などが起きている。