『読売新聞』2007年12月29日付 加速する大学連携 出身大・大学院より「学習歴」一層重要に 東京大学、京都大学、早稲田大学、慶応義塾大学の4大学が、大学院教育での学生交流に関する協定を結んだというニュースを、東京からも関西からも遠く離れた地方都市で聞いた。ある小さな私立大学の新年度からの広報戦略にかかわる取材で訪ねていた。 改めて、大学は連携の時代に入ったのだなと思う。どんな大学も、孤高を保っているわけにはいかないということだ。 有力4大学の連携の背景には大学間の国際競争の激しさがある。人材育成の面で、国際競争力を強化しないと、他国に太刀打ちできないと見るからだろう。 一方、地方都市の大学にとっては、志願者を集めること自体が難しくなっている。取材で訪ねた私大では、生き残りをかけた戦略の一つとして、アジアの複数の大学を留学先とする提携を進めている。 全国各地の国公私立大学が連携し、産学連携の大学院を東京に作る構想が動き出した。英語教育のノウハウを持つ首都圏の私大が、遠く離れた地方の女子大に学習システムを提供する。北海道と首都圏の工科大学同士が、国立と私立の枠を超えて包括協定を結んだ。研究、教育から就職支援まで協力する。 いずれもこの一か月ほどの動きだ。これからの大学問題を語るうえで、連携という言葉はキーワードになるだろう。 大学が様々な形でつながり、足りない部分を補い合おうという発想だ。文科省も、こうした戦略的な連携を進める補助制度を作ろうとしている。 連携の先にあるのは、場合によって、合併や統廃合であるかもしれない。東大と京大が合体することはあり得ないが、国立大学を取り巻く環境が様替わりしつつあることも確かだ。 では、大学を選ぶ側はどうすればいいのか。 どこで学んだかという大学歴より、何を学んだかという学習歴と、その結果、どんな成果が出たかが問われる。その傾向がより強まることは間違いない。大学全入時代は、出身大学や大学院を問う学歴社会ではなく、学習歴社会になっていくと見る。 訪れていた地方都市の小さな私大では、卒業試験を厳格に行う計画も進めている。文科省の中央教育審議会も、大学の学部卒業生の「学士力」を問う必要性を指摘しており、出口管理を強める動きも、これから広がるのではないか。 だとすると、大学を選ぶ側も、心してかからなければいけない。(中西茂) ◇ 「考」は新年から、編集委員・中西茂のコラム「教育を診る」に衣替えします。教育ジャーナリスト、勝方信一氏の「教育現論」と土曜日に交互で掲載します。 |