『高知新聞』2007年12月27日付

「票すり替え」と告発 高知大学長選考
教授ら窃盗罪主張


高知大学の学長選考で、現学長の相良祐輔氏(72)の再任を決めた学長選考会議の決定に対し、高知大教授ら14人が26日、学内意向投票の開票作業後、「何者かによって票の差し替えがされた」として被告発人不詳のまま、窃盗罪と偽計業務妨害罪で高知地検に刑事告発した。国立大学法人の学長選考をめぐる刑事告発は全国で初めて。
(高知大学長選考取材班)


無効求め民事提訴も

また同日、今回の学長選考で相良氏の対立候補だった高橋正征氏(65)=同大大学院黒潮圏海洋科学研究科長=が、「学長選考は学内諸規定に反し重大な手続き違背を犯すもので違法」として、同大を相手取って学長選考無効の確認を求める民事訴訟を高知地裁に起こした。

同大の学長選考会議は規則によって学内意向投票の結果を参考にし、委員11人が選考することになっている。高橋氏と相良氏の2候補で争われた投票は、高橋氏が41票差で優勢だったが、開票事務終了後、事務局職員2人が金庫から票の入った箱を取り出したところ、高橋氏の箱の中に相良氏の票の束(20票)が混入しているのを見つけたと主張。投票管理委員会が数え直した結果、両氏の票は1票差に変わっていた。

こうした経緯の中で告発人は、「学内意向投票の最初の開票作業では多数の委員と事務職員が少なくとも4度にわたって両候補の票数を確認しており、高橋氏の箱の中に相良氏の票が混入していることを、全関係者が見逃してしまう事態はおよそあり得ない」と指摘。

その上で、最初の開票結果の確認から票の混入が発覚するまでの約30分の間に「金庫の鍵を入手し得る何者かによって人為的に高橋氏の20票が箱から持ち去られ、相良氏の20票が箱に持ち込まれたとしか考えられない」として、票の持ち去りが窃盗罪に、票を差し替えて投票管理委員会の業務を妨害した行為が偽計業務妨害罪に当たる−−とした。

選考無効を訴える民事訴訟もこうした視点に立脚し、「最初の開票結果が確認された時点で意向投票は終了している」「事務局職員が委員会の指示も了解もないのに、独断で金庫の鍵を開ける行為自体が規則に違反している」などと指摘。

「選考会議は直ちにその原因と責任者を特定してしかるべき措置を取るとともに、投票をやり直す必要があった。にもかかわらず、こうした違法行為を何ら問題にすることなく、2つの投票結果を前提にして選考しており、重大な手続き違背を犯している」として選考無効を求めている。

取材に対し、同大は「訴状が届いてから対応を検討したい」としている。