『朝日新聞』2007年12月27日付 高知大 学長選紛糾、法廷へ 「票差し替え」告発も 高知大学の学長選考で不正な票の差し替えがあったなどとして、同大大学院黒潮圏海洋科学研究科長の高橋正征教授(65)が26日、同大を相手取って、選考の無効確認を求める訴訟を高知地裁に起こした。 訴状によると、学長選考は、元高知医大副学長で現職の相良祐輔学長(72)と高橋教授で争われ、教職員を対象に10月5日に投開票された前段階の意向投票では、投票総数806票のうち、高橋氏は419票、相良氏は378票だった。 しかし同日夜、大学職員が票を保管している金庫を開け、「高橋氏の票の中に相良氏の票が混入している」と投票管理委員会に報告。再集計の結果、高橋氏399票、相良氏398票となった。 10月17日、学内外の関係者11人でつくる最終決定の場である選考会議が開かれ、議長と欠席者を除く5対4で相良氏の再任が決まった。同大の規則では意向投票の結果は「参考にする」としており、結果には拘束力はないという。 訴状では、職員が金庫を勝手に開けることは学内規則に違反する▽票は差し替えられた可能性が強い▽意向投票の結果が不透明なまま選考会議を実施したことは重大な手続き違背−−などとしている。 高知大側は「訴状が届いていないのでコメントできない」としている。 今回の件をめぐっては高橋氏ら14人が「何者かが不正に投票用紙を差し替えた疑いがある」として、被告発人不詳のまま窃盗容疑で高知地検に告発状を提出している。 国立大学法人の学長選考をめぐっては、新潟大と滋賀医科大でも意向投票の結果と、選考会議での決定が異なり、落選した候補が任命や選考結果の取り消しを求めて提訴している。 教授会や学生に不満も 提訴した高知大の高橋教授は、一部教職員や学生らと高知市内で記者会見し、「学内で解決すべきだったが、内部ではらちが明かなかった」と胸のうちを語った。 相良学長の再任が決まった直後、意向投票の経緯が明らかにされると、学内で選考の公正さを疑う声が噴出したという。医学部と農学部を除く5教授会は10月下旬、選考会議の決定を無効とする決議を採択。学生有志は真相究明を求める2085人分の学生の署名を集めて大学側に提出した。 しかし「大学側から納得いく説明がなく、学内で解決するのは難しい」として、個別に活動していた教職員や学生等が一体となって「公正な学長選考を求める裁判を支える会」(代表・奥田一雄大学院教授)を結成。提訴と刑事告発に踏み切ったという。 支える会のメンバーの1人で人文学部4年の北代かほりさんは「法廷に持ち出されることは悲しいが、これで大学が良い方向に進めば」と述べ、奥田教授は「大学に誇りを持って働きたいし、学生には誇りを持って学んで欲しい。大学の名誉を取り戻したい」と話した。 |