『朝日新聞』2007年12月26日付夕刊 国立大の定員超過分、授業料没収 文科省、合格数抑制へ 文部科学省は、在学生が定員を大幅に上回った国立大について、学部ごとに基準を超えた分の学生の授業料を国が実質的に没収することを決めた。08年度から段階的に実施する。私大では以前、大幅な定員超過が問題化して補助金をカットする仕組みができたが、国立大にも抑制策を導入する。法人化以降、独自収入のアップを目指して合格者を増やしている国立大に警鐘を鳴らす対策だ。多くの国立大が08年度以降、入学者数を抑えるとみられる。 文科省は26日午後、都内で開かれた国立大学協会(会長=小宮山宏東京大総長)の集会で「没収」の具体策を初めて説明した。07年度に定員の110%を超えて学生がいる学部は、約350のうち数十あるとみられる。 抑制策のポイントとなるのは、基準を超えて入学させた学生の人数だ。国立大に渡した運営費交付金(人件費などに使われる補助金)のうち、その人数分の授業料と同額を使えないように凍結し、後に国庫に返還させる。実質的に、基準を超えた人数分の授業料を国が召し上げることになる。 基準は3年かけて段階的に厳しくしていく。08年度は定員の130%を超えた1年生の分、09年度は1、2年生の合計で120%を超えた分、10年度以降は1〜3年生の合計で110%を超えた分の授業料収入を召し上げる。1年生だけが基準を上回った場合も、超過分を納めさせる。国費留学生や休学者などは学生数から除くほか、定員が100人以下の小規模学部は、実際の入学者数を読み誤りやすく基準超過が起きやすいとして例外規定を設ける。 全国立大の授業料は08年度入学生から53万5800円。たとえば1〜3年生の定員の合計が1000人の学部で、10年度に1〜3年生の学生数が1200人いるとすれば、基準となる110%(1100人)を上回る100人分の授業料、計5358万円が取りあげられる。 大学は入学する学生を増やせばその分、入学金や授業料などの収入が増える。だが、定員を大幅に上回る学生を入学させれば、大勢が教室に詰め込まれて授業を受けるなどの不利益を被る恐れがある。 私大の抑制策は現在、医歯学部は定員の104%、理工系学部などは107%、それ以外の学部は109%を超えると、学生数などに従って国から支払われる「一般補助」がカットされる。 一方、国立大は04年の法人化で入学金や授業料が各校の収入になったため、収入増加を図って合格者を増やすケースが相次いでいる。06年には国立大全体の入学定員の充足率は108%に達し、地方などで定員割れが相次ぎ107%だった私大を初めて逆転。このため私大側から、国立大にも定員超過を抑制する仕組みを求める声が上がっていた。 |