『高知新聞』2007年12月25日付夕刊 話題(夕刊記者コラム) 学長選考をめぐる混乱で高知大のイメージが悪くなった、と聞くが、そうは思わない。一連の経過に素朴な疑問を抱いたのがきっかけで、二千八十五人分もの学生の署名を集め、学長とじかに向き合って要望書を手渡した学生たちがいるのだから。 彼女らはさらに、学外委員一人一人に意見を聞くため手紙を書いた。今どき、こんな学生が存在するだけでも頼もしく、学生がそうした行動が取れる環境にあること自体、高知大が民主的な大学であることを実証しているように思う。 彼女らの思いのこもった手紙には、学外委員全員が誠意を持って回答を寄せた。ただ、その中身は、意向投票の結果が学外に漏れ、選考会議が行われる前に新聞報道がなされたことへの強い批判や、「煽りたてるような動きを苦々しく見つめていた」とするようなものだった。学生や教授らの抗議を疑問視する回答に、質問した学生が「悲しく、憤りを感じる」結果となってしまった。 一連の選考会議の対応は外に開かれているとは言えず、終始、学内の民意を測る意向投票に重きを置かずに判断しようとする姿が見てとれる。併せて一連の騒動が報道されたことに対する嫌悪も感じる。しかし県内唯一の国立大である高知大が法人に移行して初めての学長選考なのだから、その意味は大きい。いくら意向投票に法的拘束力がなくとも、その結果に学内外の関心が高まるのは当然だ。 企業経営者でもある委員の一人は「国立大学法人の学長選考は社長を選考するようなものであり、社員の投票で選ぶものではない」と回答していた。そうだとすれば、社員の多くがトップに反発する企業が、この不況下で立ちゆくのだろうか・・・(広末智子) |