『読売新聞』2007年12月8日付

「学力向上サミット」提言…教育再生会議素案


政府の教育再生会議(野依良治座長)が今月末にまとめる第3次報告素案の概要が8日、明らかになった。

学力向上のため、都道府県知事や教育長による「全国学力向上サミット」を開催することや人事・予算に関する校長の裁量拡大、大学の学長・学部長選挙の廃止などを打ち出している。

今後の集中審議で詰めの作業を行い、25日に予定している総会で第3次報告を決定する。


全国の知事、教育長参加 応用力低下危機感

同会議は、2006年国際学習到達度調査(略称PISA)で、日本が理数系で世界のトップレベルから転落したことや今春実施した全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)で応用力に課題が残ったことなどから、日本の児童・生徒の学力低下に危機感を強めている。

このため、打開策を各都道府県の現状を踏まえて検討する必要があると判断し、「全国学力向上サミット」の開催を提言する考えだ。国が各都道府県に呼び掛けて知事らの出席を求め、各県の学力向上への取り組みや課題などを紹介し、議論する。

他県の学力向上策を参考にすることのほか、各県のトップに学力向上の意識を高めてもらうことなどが狙いだ。現在は、学力に関する全国規模の会議はないという。

このほか第3次報告の素案では、大学改革について、「学長が最終責任者として、大学の運営管理を行うため」として、学長・学部長選挙の廃止を盛り込む。学内の「派閥」などによる無用な争いを避けることが眼目だ。校長の予算・人事面での権限の強化のため、裁量拡大のモデル事業実施も提言する。

学校の第三者評価については、国の運用指針を参考に各自治体の教育委員会が外部の有識者や地域住民による評価委員会を設けて実施することを明記。有害情報対策として、小中学生の携帯電話にフィルタリング(選別)機能を義務づける法的規制の導入の検討も盛り込んだ。

一方、行政から支給された「バウチャー」(クーポン券)を通いたい学校に渡す教育バウチャー制度は明記しない。その代替案として、入学する学校を選ぶことができる「学校選択制」をモデル事業を通じて推進し、各学校の児童・生徒数に応じて予算配分をすることを盛り込む。

だが、地域間の教育格差につながるとして反対意見もあるため、今後の議論を踏まえて結論を出す予定だ。

大学進学希望者に「高卒学力テスト」を実施し、合格者に大学受験の資格を与える新たな制度については、「慎重な検討が必要」として見送る。