『読売新聞』2007年12月11日付

有力大学は高い「教員自給率」東大、京大は7割超す…出身校分析調査


大学教員の出身大学は以前より多様化したものの、有力大学の教員自給率は依然高く、東大や京大では7割を超えていることが、くらしき作陽大学の山野井敦徳教授(広島大名誉教授)らの研究でわかった。

山野井教授らは、全国の大学に勤める講師以上の専任教員11万人の出身校を「全国大学職員録」などで分析。特に、学術研究で中心的な役割を果たしている国立11校、私立2校(表参照)を「研究大学」と規定して、全国の大学教員の中での自校出身者の割合(「占拠率」)や、各校で教員全体に自校出身者が占める割合(「自給率」)を調べた。

出身校は原則として、職員録記載の最終学歴であるため、A大学を卒業していても、最後にB大学の大学院を修了していれば、A大学の教員になっても、自校出身者に含めなかった。他方、A大学の大学院を修了し、B大学に就職後、A大学の教員になった場合は、自校出身者として数えた。

その結果、13校の「占拠率」は、東大が1961年の24・8%から2001年に11・4%に下がるなど、研究大学のシェアが下がり、出身校の多様化が進んでいた。

しかし、各校の「自給率」は、東大は54年の98・0%から03年の78・0%に、京大は86・6%から72・3%に下がったものの、ともに7割台を維持。他の研究大学でも、外国大学出身者採用に積極的な一橋大学を除けば、4割程度以上のシェアを確保していた。13校の教員約1万5000人のうち、13校以外の出身者は15%程度にすぎない。

山野井教授によると、米国の研究大学には、内規で自校出身者を2割程度にとどめているところも多いという。歴史的にも、優秀な人材を他大学からスカウトすることで異質な文化が混じり合い、教員相互の研究や教育が刺激され、多数のノーベル賞学者を輩出する成果を生んできた。

今回の調査結果について、山野井教授は「自給率7割は、世界の主要大学の間では常軌を逸している。戦前期に確立した『学閥』が根強く残っているためだ」と見る。その上で、「日本の大学に教員の流動性や異質性が低いことが、国際的にリードするような研究や教育を生みにくくしている。自給率を3割程度に歯止めをかけるなど、教員人事制度を抜本的に見直すべきだ」と指摘している。

山野井教授らは、今回の研究成果を「日本の大学教授市場」(玉川大学出版部)としてまとめており、来月28、29日、広島市で開かれる国際会議「変容する大学教授職」でも議論する。(石塚公康)