『日経ネット関西版』2007年12月7日付 知力立圏 第4部・競争力解剖(中)──研究開発得意分野、層厚いバイオ・医薬 地域活力の源泉となる近畿の研究開発力を分野ごとに関東、東海など全国各地と比較してみると「バイオテクノロジー・生命科学」「医薬品」が健闘する一方、「産業ロボット・機械工学」は低迷した。 ヒト、モノ、カネ、情報が東京に一極集中する状況を反映し、いずれの分野も関東がトップとなった。日本の医薬品業界のルーツである大阪・道修町を抱えるなど近畿が伝統を持つ分野では底力を示した。「バイオ」が関東に8点差に肉薄したのに加え「医薬品」も首位に23点差に迫った。 経済規模や企業数などで関東に及ばない中での善戦に、日本政策投資銀行関西支店の横森大典調査役は「関西はバイオ産業を育成するプロジェクトが多い。これを先行投資と見なせば、今後も十分関東に対抗できる」と読み解く。 近畿は調査で「自治体の支援策が優れている」(28.6%)、「ベンチャー企業が集積する」(38.1%)との回答が他地域よりも際だって高く、バイオ産業の支援に熱心と受け止められているようだ。逆に関東で「自治体の支援策が優れている」とする回答は6.1%にとどまった。 一方、大阪市や関西経済連合会などが次世代産業の核に育てようと音頭を取る「ロボット」は振るわない。関東に60点近く引き離され、東海にもわずか2点差に迫られている。 トヨタ自動車が11月に、ロボット事業の拡充戦略を発表。関東はホンダなどの2足歩行ロボットの研究が進む。大手企業がけん引する他地域に比べ、どちらかといえば官主導の近畿は推進力が欠けると映ったのかもしれない。 梅田北ヤードの再開発の中核施設として、ロボットビジネス育成拠点の整備を進める計画だが、競争力確保に新たな手立てが必要となりそうだ。 本社機能の東京移転の流れが止まらないように、企業はどの分野でも近畿を厳しい目で見ている。健闘する「バイオ」にしても、企業に限ると7割強が「関東が1位」と回答している。 シャープが堺市に世界最大級の液晶パネル新工場を着工。松下電器産業も兵庫県尼崎市でプラズマパネル工場の大型設備投資を続けるなど、近畿は情報家電をリードしているイメージが先行している。だが調査では、この分野でも関東に50点以上離されている。 横森氏は「シャープの液晶コンビナートや松下の尼崎工場の強みを生かすためにも、液晶、プラズマの次の製品を見据え『表示装置なら関西』となるよう部品や素材のすそ野産業を育成し、地域のブランド力を高めることが大切だ」と強調する。 調査で近畿圏の知の強みを聞くと、「ものづくりにこだわる中小企業の集積」(75.4%)、「独創的な経営者が多い」(59.4%)、「ノーベル賞受賞者を輩出する大学の存在」(55.1%)の回答が上位を占めた。この強みをうまく組み合わせ、機能させることが地域競争力向上のカギとなりそうだ。 |