≪声明≫民主党「教員数拡充法案」(行革推進法および人材確保法改正案)のさらなる改善を求めつつ、その成立を期するために多くの方々の連携強化を訴える

2007年12月7日 国立大学法人法反対首都圏ネットワーク事務局

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11月29日、行革推進法(簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律(平成18年法律第47号)http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H18/H18HO047.html)の改正案(http://www.dpj.or.jp/news/dpjnews.cgi?indication=dp&num=12298)が議員立法として国会に提出された。提出者は、牧義夫「次の内閣」ネクスト文部科学副大臣はじめとする民主党議員諸氏であると発表されている。

改正案は、行革推進法の42条、53条、74条の各条項において、「独立行政法人等」から「等」を削り、同法の対象を「独立行政法人」に限定することとしている。すなわち、この改正案が成立すれば、国立大学法人は行革推進法が求める総人件費の削減目標(2006年以降の5年間で2005年度の水準の95%以下に削減(53条1))から除外されることになる。

また、今回の民主党改革案には、行革推進法のうち、公立学校の教職員等の「児童及び生徒の減少に見合う数を上回る数の純減」をうたった条項(55条3)や、人材確保法の「廃止を含めた見直し」を指示する条項(56条3)を削除が盛り込まれている。同時に提出されている人材確保法の改正案が義務教育ゥ学校の教員の「十分な人数の配置を確保するために必要な措置」を求めている。

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これまで本ネットワーク事務局は、経済財政諮問会議の「総人件費改革基本指針」(2005年11月14日、http://www.gyoukaku.go.jp/soujinkenhi/keii/051114.pdf#search='総人件費改革基本指針')や「総人件費改革の実行計画等」(2005年12月24日閣議決定、http://www.kantei.go.jp/jp/singi/gyokaku/kettei/051224housin.pdf#search='総人件費改革の実行計画等')が掲げた国立大学法人の総人件費削減の方針を、国立大学の研究・教育組織の維持に致命的な打撃となるものとして強く批判してきた。また、国立大学法人法がもたらしている高等教育の危機を打開するためには、初等中等教育と高等教育に表れている共通の困難を明らかにし、初等・中等・高等すべての関係者が共闘すべきことを強調してきた。さらに、初等中等高等教育のすべてに表れている、研究教育に必要な基礎的経費の減少、なかんずく教育や研究を支える人的資源の削減に対して強い危機感を表明してきた。民主党改革案が、このような危機感を共有し、初等中等高等教育全体が直面している人的資源の脆弱化という問題に対峙しようとしていることをまず評価したい。

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とはいえ、民主党改正案には以下三点にわたる問題があり、さらなる改善が求められていることを率直に指摘したい。

一つは、行革の論理によって公立大学の独法(地方独立行政法人)化を「推進する」ことを求めた55条5の条文は手をつけないことである。これでは、削減率こそ明示されていないものの、国と同水準ないしは国以上の総人件費削減が地方自治体に半ば強制されていく法の構造に、公立大学は組み込まれたままになる。また、改正案に公立大学の独法化推進条項を残したのでは、道州制導入をにらんで、予定される道州内の国立大学群を1大学に統合し、それを道州立、すなわち公立大学にする再編する策動に利用される危険がある。こうした再編策動は、昨年、御手洗経団連会長が打ち上げた“大九州大学”プラン(九州地域の国立大学を1大学に再編・統合し、各県のキャンパスは1つないし2つの学部のみにリストラする http://www.keidanren.or.jp/japanese/speech/20060828.html)をみれば、十分起こり得ることなのである。教育予算の充実という改正案の趣旨を確実にするためには、国立大学法人と同様に、公立大学の法人化および公立大学法人の人件費管理に関する条文も行革推進法から削除すべきである。

二つ目は、大学同様、学術研究において重要な役割を担っている研究機関や博物館・美術館などの独立行政法人の存在についての配慮がないことである。これらの機関も行革推進法の総人件費削減の対象からは除外すべきである。より根本的な問題としては、行革推進法が対象業務の性格や必要性とかかわりなく、「簡素で効率的な政府」という政策目標を行政組織および関連機関に一律に押しつけ、総人件費削減を強制していることを改めて強調しなければならない。民主党改正案がこの一大錯誤である行革推進法を廃止する第一歩となるためにも、上記2点の改善は不可欠であると考える。

そして、第三番目の問題は、人材確保法改正案についてである。民主党改正案は、義務教育教員数を増員させようとしているにもかかわらず、教職員数をコントロールしている「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」、いわゆる標準法に直接メスを入れるものとなっていないことである。文科省は、1959年以来、法律による義務付けがないにもかかわらず、学級定員数の減少を求める国民世論に応答して、7次にわたる「学級編制及び教職員定数改善計画」を立て、教育条件の要をなす学級定員数の改善に当たってきた。教師一人当りの生徒数を減少させ、教育条件を向上させるためには、この施策を発展させ、民主党人材確保法案4条を標準法に規定し、かつ、学級編成および教職員定数改善計画の策定と、国会への報告を義務付けることが、問題の解決により良く貢献しうるはずである。

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今本ネットワーク事務局は、この改正案が上記の問題点を改善された上で、本臨時国会において成立することを強く期待する。そのために関係諸団体、諸組織ならびに市民の皆さんが国会の内外で大きな協力・連携態勢をとられることを切望するものである。本事務局もそのために尽力することを表明する。