『産経新聞』2007年11月25日付

国立大で奨学金制度が充実


成績優秀者に奨学金を出したり、授業料を免除したりする国立大学が増えている。従来の奨学金は経済的に苦しい学生への支援の意味合いが強かったが、「大学全入時代」を迎え学生の質の低下が懸念されるなか、競争意識を持たせて意欲を引き出すほか、優秀な学生の囲い込みが狙い。国立大が法人化され予算の使途が広がった平成16年以降、こうした支援制度が充実してきている。

横浜国立大は今年度から、工学系大学院(工学府)に、奨学金制度を設けた。年額120万円で、同大では「全国の国立大の中でも最も手厚い制度。経済支援をすることで、安心して研究に専念してもらうために設けた」としている。研究業績をもとに選考する。入学前に支給の内定を出すので、一番経費がかかる入学時に奨学金が受け取れるのも特徴だ。

一橋大は今年度、「学業優秀学生奨学金」の制度を設けた。学部生が対象で、各学部1人に月額8万円を授与する。特に成績が優秀であることが条件で、経済状況は問わない。海外へ留学する場合には奨学金の全額を一括して受け取れるなど、学ぶ意欲を引き出す工夫がされている。

大阪大は17年度から、「教養教育奨学金」を支給している。2年生前期までの成績優秀者が対象で、約50人が20万円を受け取れる。

成績優秀者に対し、年間授業料約50万円を全額免除する大学もある。岡山大が18年度から実施。入学試験の後期日程試験の成績上位1%に適用している。同大は「優秀な学生に来てほしいというメッセージ」と説明している。

島根大や香川大にも、成績優秀者の学費を減免する制度がある。

文部科学省は「大学の魅力づくりとして奨学金の制度を導入するのは一つの手段になっている。寄付金で基金を設立する動きもあり、奨学金を出す大学は増えるだろう」としている。